2026/09/28(月)|ホルムズ海峡の緩和観測で原油急落、AI高揚でダウ478ドル高。金利は高止まりのまま金は4,280ドルで週を終える
米・イランがホルムズ海峡再開に向けた段階的合意を協議しているとの報道でBrent・WTIが急落し、米10年債利回りは5.17%へ小幅に低下したが2007年以来の高水準は維持した。MicrosoftのAI新機能などを材料にダウ平均は478ドル高。一方でOracleの5年CDSは2009年以来の水準に達し、AI高揚と信用不安が同時進行している。金は4,280ドルで週を終えた。
- 米10年債利回りは5.17%へ小幅低下も2007年以来の高水準を維持。米2年債は4.81%へ低下した。
- 米・イランがホルムズ海峡再開への段階的合意を協議中と報道。WTIは92.41ドルへ2.33%下落、Brentも104〜105ドル台へ続落した。
- MicrosoftのCopilot新機能やAnthropic関連の材料でダウ平均が478ドル高(+0.93%)。Nasdaqも27,068ドルへ続伸。
- Oracleの5年CDSスプレッドが151.3bp(+14.4bp)と2009年の金融危機以来の水準に達し、AI設備投資向け与信への警戒が続く。
- 実質金利(TIPS10年)が2.85%で5営業日ぶりに確認できた。金は4,280ドルで週を終え、週間では2%超下落。
- レジスタンス4,3049/23終値の水準。戻りの最初の関門(据え置き)
- レジスタンス4,300心理的節目。9/25も明確な上抜けはできず
- 現在値4,2809/25 usagold終値。週間では2%超下落したが4,230のネックラインは3営業日連続で維持
- サポート4,252usagoldが示す直近サポート帯(新規)
- サポート4,2308/7・9/16の安値が重なるネックライン。9/24・9/25と2営業日連続で割れず
2026/09/28 07:20 JST(9/25の米国セッションを扱います)
Macro Theme
前号(No.5、9/25分)まで続いていた「世界同時の債券安」が、金曜のセッションで小休止した。米10年債利回りは5.17%へ小幅に低下し、米2年債も4.81%まで下げた。ただし水準そのものは2007年以来の高さを維持しており、反落というより「上昇一服」に近い。
金曜の主役は金利ではなく原油だった。米・イラン両政府がホルムズ海峡の再開とイラン港湾封鎖の解除を段階的に進める合意を協議しているとブルームバーグが報じ、WTIは2.33%安の92.41ドル、Brentも104〜105ドル台へ続落した。2026年2月以降続くホルムズ海峡を巡る紛争そのものが解決したわけではないが、市場は「最悪期を脱しつつある」というシナリオを織り込み始めている。
株式市場はこの原油急落と、Microsoft・Meta関連のAI好材料を両方好感し、ダウ平均が478ドル高(+0.93%)となった。他方でOracleの5年CDSスプレッドは2009年の金融危機以来の水準に達しており、「AI関連株は買われるが、AI関連の与信は同時に悪化する」という前号からの分裂がむしろ深まっている。
Market Drivers
① 米・イランがホルムズ海峡再開への段階的合意を協議
米・イラン両国が、国連総会の場でカタールの仲介のもと、ホルムズ海峡の段階的な再開とイラン港湾封鎖の解除を協議していると複数メディアが報じた。6月に一時的な停戦につながった枠組みに似た「段階的合意」とされる。
原油が急落し、WTIは92.41ドル(−2.33%)、Brentも104ドル台へ下げた。ただし6月の合意は数週間で崩壊した経緯があり、市場はこの報道を「恒久的な解決」ではなく「リスクプレミアムの一時的な剥落」として扱っている。
② AI関連の好材料がダウ・Nasdaqを押し上げ
MicrosoftがCopilotアプリに常時稼働型AIエージェントとコーディング機能を追加すると発表し株価は+3.7%。AkamaiはAnthropicとの116億ドル規模のクラウド契約(Anthropicに最大5%の株式取得権付き)を材料に+3.2%。
ダウ平均は478.64ドル高(+0.93%)で3週続落を止め、Nasdaq総合も27,068.72(+0.5%)へ続伸した。金利高・原油高という重しの中でも、AI個別材料が指数を押し上げる構図は前号までと変わらない。
③ Oracleの信用リスクが2009年以来の水準に
Oracleが一部データセンター向けリース債務の支払い延期を模索していると伝わり、5年物CDSスプレッドが14.4bp上昇の151.3bpと、2009年の金融危機以来の水準に達した。2035年満期の社債(表面利率5.2%)のスプレッドも17bp拡大し171bpとなり、発行時のスプレッド(105bp)を大きく上回っている。
前号で報告した「Oracle周辺のCDSが過去最高水準」という流れが金曜も継続・悪化しており、AI設備投資の資金繰りへの警戒は一過性のものではなくなりつつある。株式市場のAI高揚とは対照的に、信用市場では警戒が積み上がっている。
情報元:
- Bloomberg(US, Iran Said to Be Exploring Phased Deal to Open Hormuz、2026/09/24)
- The Japan Times(U.S., Iran said to be exploring phased deal to open Hormuz、2026/09/25)
- Detroit News(Wall Street ends higher as investors buy AI stocks; Microsoft rallies、2026/09/25)
- Axios(Oracle rekindles the data center debt risks、2026/09/25)
金利(起点)
米10年債利回り:5.17%(前日比−5bp程度)。2007年6月以来の高水準は維持
米2年債利回り:4.81%(前日比で低下)
日本10年債利回り:3.070%(9/25 17:03時点)。前号の3.075%からほぼ横ばいで、1996年以来の高値圏を維持
実質金利(TIPS10年):2.85%(ブレークイーブン・インフレ率2.28%)。前号まで5営業日連続で「未確認」としてきたが、今号でようやく複数ソースで確認できた
名目金利がわずかに低下する一方、実質金利は高水準を維持していると見られる。名目・実質の差(ブレークイーブン)が2.28%で落ち着いていることは、インフレ期待そのものは急騰していないことを示しており、金曜の金利低下は「インフレ懸念の後退」よりも「原油急落による目先の物価圧力低下」を反映したものと解釈するのが妥当である。
日本10年債が3.07%台で高止まりしている点は前号から変わらない。米国の金利低下幅が小さいため、日米の金利差そのものは大きくは動いていない。
情報元:
- CNBC(10-year Treasury yield is little changed to end a volatile week、2026/09/25)
- Trading Economics(Japan Government Bond Yield)
- FRED(Market Yield on U.S. Treasury Securities at 10-Year Constant Maturity, Inflation-Indexed, DFII10)
ドル
DXY:101.03(−0.25%)。4営業日続伸したあと小幅反落し、なお2カ月ぶりの高水準圏
USD/JPY:157.23円(−1.02%)
ドル指数は木曜まで4営業日連続で上昇していたが、金曜はホルムズ海峡の緩和観測で原油主導のインフレ懸念がやや後退し、小幅に反落した。ドル円も158円台から157円台前半へ戻し、前号で指摘した「輸入インフレの再燃」圧力は目先やや和らいだ形である。
日本10年債利回りが1996年以来の高水準を維持しているにもかかわらず、円が対ドルで戻したのは金利差というより、原油安によるドル全体の伸び悩みが主因とみられる。
情報元:
商品
WTI:92.41ドル(−2.20、−2.33%。木曜の94.61ドルから続落)
Brent:104〜105ドル台(複数ソースで104.32〜105.69ドルの範囲。前日比の正確な変化率は情報元により食い違うため記載を見送るが、「続落」で各紙一致している)
金:4,280ドル(usagold系列、+0.12%、+4.96)
Macro Drivers(三軸)
実質金利:2.85%(5営業日ぶりに確認)。名目金利がわずかに低下する中、金の逆風はやや和らいだ
ドル:DXY 101.03(−0.25%)。木曜までの上昇が一服し、金への逆風がわずかに緩んだ
地政学:米・イランのホルムズ海峡再開協議で原油が急落。地政学リスクプレミアムの一部が原油から剥落したが、紛争そのものは未解決であり、金の質への逃避需要を完全には消していない
資金フロー結論
原油が急落した金曜は、通常であれば「地政学リスク後退→安全資産売り」で金にも逆風となる場面である。しかし金は+0.12%とわずかに上昇しており、実質金利の高止まりとドルの一服が支えになったとみられる。週間ではなお2%超の下落となっており、4,230ドルのネックラインを守れるかが引き続き焦点である。
情報元:
- Fortune(Current price of oil as of Sept. 25, 2026)
- EnergyNow(Oil Ends Week Lower as U.S.-Iran Truce Hopes Hit WTI、2026/09/25)
- USAGOLD(Silver Leads Physical Metals Higher As Gold Holds $4,280、2026/09/25)
株
S&P 500:7,743.41(+0.51%)。50日移動平均(7,636.06)・200日移動平均(7,205.20)をいずれも上回る水準を維持
Nasdaq総合:27,068.72(+0.5%)
ダウ平均:51,828.62(+478.64、+0.93%)。3週続落を止めた
日経225: 66,364.20(+850.21、+1.30%)。9/25の東京市場終値
米3指数は前日までの下げ幅(S&P −0.45%、Nasdaq −0.73%、ダウ −0.31%)から一転して揃って上昇した。原油急落による物価圧力の後退と、Microsoft・Akamai等のAI関連好材料が、金利の高止まりという逆風を上回った格好である。日経225も金利高・ドル高が一服したことを好感して+1.30%と大幅高となった。
Oracle周辺の信用不安(CDS急拡大)は続いているが、金曜時点では株式市場全体への波及は限定的で、AI関連の好材料が優勢だった。この株式(強気)と信用市場(弱気)の分裂がどちらに収斂するかが、来週以降の焦点になる。
情報元:
- Yahoo Finance(Stock market today: Dow, S&P 500, Nasdaq notch weekly wins as market shrugs off bond sell-off, oil prices ease、2026/09/25)
- Detroit News(Wall Street ends higher as investors buy AI stocks; Microsoft rallies、2026/09/25)
Crypto
BTC:84,400ドル前後(複数ソースで84,300〜85,200ドルの範囲。24時間で+0.6%程度)
ビットコイン現物ETFはこの日も1.34億ドルの純流入となり、7営業日連続の流入を記録した。週間では24億ドルの流入となり、2026年の年初来資金フローがついてプラスに転じた。前号で観察した「BTCは高デュレーション資産として株・金利と連動する」という構図のもと、株式市場の反発とともにBTCも小幅に切り返している。
金が原油急落・地政学リスク後退の中でも下支えを維持したのに対し、BTCの戻りは値幅としては限定的で、金ほど明確な「質への逃避」需要は見えていない。
情報元:
- Rio Times Online(Bitcoin Steadies at $84,379 as Fed Rate Bets Pressure Crypto、2026/09/25)
- The Block(Bitcoin ETFs turn positive for 2026 with $2.4 billion weekly inflow、2026/09/26)
Volatility
VIX:14.87(9/25終値)
日経VI:20.30(−7.81、−27.78%)。9/24の急伸から一転して大幅低下
日経VIの急低下は、前日(9/24)に海外の金利上昇・株安を織り込んで急伸した反動に加え、金曜の東京市場が金利高・ドル高一服を好感して大幅高となったことを反映している。前号で「連休明けの警戒感の表れ」とした日経VIの急伸は、1営業日で解消された形である。
VIXも14.87と落ち着いた水準にとどまっており、金曜の株高・原油安を市場が「リスクオン」として素直に受け止めたことが読み取れる。ただしOracle周辺の信用市場では緊張が続いており、株式のボラティリティ指標に表れていないリスクが残っている点には注意したい。
情報元:
今日の資金フロー
金曜は「原油急落・株高・金利高止まり」という組み合わせで、前号までの「世界同時の債券安」からいったん焦点が移った一日だった。ただし国債利回りの絶対水準そのものは高いままであり、Oracle周辺の信用市場では警戒がむしろ深まっている。株式市場のAI高揚と信用市場の警戒という分裂は、金利ショックに次ぐ新しい観測点として来週に持ち越される。
総括:ホルムズ海峡の緩和観測が原油とAI関連株を押し上げた一日。金利の高水準とOracleの信用悪化は解消されていない。
マーケットポジション(中期の歪み)
最大の歪みは、株式市場(AI高揚)と信用市場(AI与信への警戒)の分裂である。Oracleの5年CDSが2009年の金融危機以来の水準に達している一方、AI関連の好材料でダウ・Nasdaqが上昇するという組み合わせは、通常であれば長くは両立しない。前号で「AI設備投資の資金繰りが行き詰まるという新しい波及経路」と書いたが、金曜時点ではこの経路が株式市場全体には波及していない。この分裂がどちらに収斂するかが、来週最大の観測点になる。
もう一つの歪みは、米・日の金利が2007年・1996年以来の高水準を維持したまま、金曜だけ原油急落で目先の物価圧力が後退したことである。ホルムズ海峡の紛争そのものは未解決であり、段階的合意が崩れれば原油は再び急伸し、金利上昇圧力が復活する可能性がある。前号までの「世界同時の債券安」という基調そのものが変わったわけではない点には注意したい。
Next Flow(短期)
シナリオA:ホルムズ海峡の段階的合意が進展する
ただし6月の合意が数週間で崩壊した前例があり、進展は緩やかにとどまる可能性が高い。
シナリオB:Oracle周辺のAI信用不安が株式市場に波及する
前号のシナリオCの延長線上にある経路。
シナリオC:ホルムズ海峡の合意が再び崩壊する
Market Bias(短期)
中立。原油急落・AI高揚で株式市場はリスクオンに傾いたが、金利の高水準とOracle周辺の信用悪化という前号までの重しは解消されていない。
最優先の監視項目は3つ。
- ホルムズ海峡の段階的合意が実際に履行されるか。6月の前例では数週間で崩壊した
- Oracle周辺のAI関連信用不安(CDS)が他の与信や株式市場全体に波及するか
- 金の4,230ドルネックライン。9/24・9/25と2営業日連続で死守している
本日の市場スケジュール(JST)
- 東京市場:通常取引。金曜の米株高・原油安を受けての寄り付き
- 米国市場:通常取引
- 注目:ホルムズ海峡を巡る米・イラン協議の続報、Oracle関連の信用市場(CDS・社債スプレッド)の反応、月末に向けた米経済指標
2026/09/28 07:20 JST 時点。主要トリガーはホルムズ海峡の段階的合意協議、Oracle関連の信用市場、米金利の高止まり。