第45週|民主党が上下両院を制し、WTIは週間−12.76%の90ドル台。金は+5.04%の4,070ドルで4,000ドル台を回復した一方、AI規制への警戒でNasdaqは−3.37%、日経225は金曜に歴代3位の下げ幅で−9.25%
11/3の中間選挙で民主党が上下両院の多数を確保し、市場はイラン戦争の終わりが近づくと読んだ。WTIは104.12ドルから90.83ドルへ−12.76%、期待インフレ率は−11bp。金は3,875ドルから4,070ドル(読み取り)へ+5.04%と戻した。同じ選挙の結果がAI規制への警戒としても売られ、Nasdaqは−3.37%、日経225は11/6に−3,643円で−9.25%。金曜の雇用統計は16.5万人と強く、12月の利上げ観測が戻った。
- 11/3の中間選挙で民主党が上下両院の多数を確保した(AP・CNBC)。市場はイラン戦争の終わりに近づくと読み、WTIは週間−12.76%の90.83ドル、Brentは−13.32%の98.32ドル(前週比は1月限どうし)。期待インフレ率(10年BEI)は2.34%から2.23%へ11bp下がった。
- 金の現物は10/30確定値3,875.20ドルから11/6読み取り4,070.59ドルへ+5.04%(USAGOLD)。選挙の結果が出た11/4に+3.39%と大きく上げ、11/5の株の急落の日も+0.65%と換金売りに押されなかった。銀は+5.51%、プラチナは+6.97%。
- 同じ選挙の結果が、データセンターへの規制が強まる材料としても売られた。11/5に半導体株指数は−12.25%、Nasdaqは−5.52%で調整局面に入り、11/6の日経225は−3,643.13円(−5.96%)の57,434.77円と下げ幅は終値で過去3番目(NHK)。週間でNasdaqは−3.37%、日経225は−9.25%、VIXは25.64へ+32.03%。
- 11/6の米10月雇用統計は非農業部門が16.5万人と予想6.5万人を大きく上回り、失業率は4.1%へ下がった(Kitco、Yahoo Finance)。発表後に2年債は4.53%へ上げ(Kitco)、FF金利先物からの算出では12月の利上げは0.76回分(前週0.70回分)。金は金曜に小幅に下げたが、4,000ドル台を保った。
- ドル指数は+0.41%の102.30、ドル円は+0.59%の158.45円。BTCは−2.36%で、現物ETFは週間12.82億ドルの流出(Farside)。金ETF・銀ETFの保有量は確かめられず未確認。
各資産の週次パフォーマンス
25 銘柄貴金属
- 金(XAU/USD)4,070.59+5.04%読み取り10/30確定値3,875.20から11/6読み取りへ+195.39ドル。確定値で11/2が3,946.59、11/3が3,930.14と戻りは鈍かったが、選挙の結果が出た11/4に+3.39%と跳ね、11/5は株の急落の日に読み取り4,087.97と小幅高。金曜は雇用統計の強さで小幅に下げた。COMEX先物は週足で高値4,155.8、安値3,889.0
- 銀(XAG/USD)51.803+5.51%COMEX先物。週足は48.550〜52.950。前週に金の3倍近く売られた分を、金とほぼ同じ率で戻した。金曜は雇用統計のあとも51ドル台を保った
- プラチナ(XPT/USD)1,538.20+6.97%前週の−7.61%をほぼ取り戻した。貴金属の中で最も大きく上げた
- 円建て金(XAU/JPY)644,985+5.66%読み取り1トロイオンスあたりの算出値(USAGOLDの読み取り × ドル円NY17時)。ドル円が+0.59%と円安に振れた分、ドル建てより上げが大きい。国内の店頭小売価格(1グラムあたり)とは別物
金利
- 米2年債利回り4.51%−5bp11/3の4.61%から、株の急落の11/5に4.46%へ12bp下げた。金曜は雇用統計の強さで4.53%へ戻し(Kitco)、引けは4.51%。週間では下げたが、週の安値からは戻して越週した
- 米10年債利回り4.86%−8bp11/3の4.95%から、原油安と株安で11/5に4.84%へ。期待インフレ率の低下(−11bp)が下げの中心で、実質金利はむしろ上がった
- 米2-10年スプレッド+35bp−3bp11/2に32bpまで縮み、11/5に38bpへ開いた。週間では小さく縮んだ
- 実質金利(TIPS10年)2.63%+3bp名目金利は下がったが、下げたのは期待インフレ率で、実質金利は小さく上がった。金の上げは実質金利の低下では説明できない
- 期待インフレ(10年BEI)2.23%−11bp原油の急落に沿って下がった。今週の金利の動きの主役
- 日本10年債利回り2.806%−1bp11/5時点。11/6の株の急落は反映していない
為替
- ドル指数 DXY102.30+0.41%選挙の結果でユーロに対して売られ、11/4は読み取り101.51まで下げたが、金曜の雇用統計で買い戻された。金の上げはドル安では説明できない
- USD/JPY158.45+0.59%NY17時。週足は157.25〜158.77。11/5は株の急落と日銀の議事要旨で157.66円へ円が買われたが(FXStreet)、金曜の雇用統計で158円台半ばへ戻した
- EUR/USD1.1142−0.18%
商品
- WTI原油90.83−12.76%11/2にイランが対話に傾いて−7.36%、11/4に選挙の結果で−8.29%の88.12ドル。11/5からはホルムズのタンカー攻撃で戻し、金曜は+0.31ドルの90.83ドルで引けた(CNBC)
- Brent原油98.32−13.32%限月交代の週。前週比は1月限(BZF27)どうしで出した。CNBCは期近の比較で週間16%超の下げと伝えた。100ドルを割って越週した
- 銅(COMEX)6.2180−3.72%11/5に−2.97%と株と一緒に売られた。貴金属が上げた週に銅だけが下げた
株
- S&P 5007,376.86−2.68%11/4に+1.58%と上げたが、11/5に−4.36%。金曜は+0.31%と小さく戻した。週間では6月以来の大きな下げ(Yahoo Finance)
- Nasdaq総合24,579.43−3.37%11/5に−5.52%で、10月の最高値から1割超下げた調整局面に入った。金曜は+1.09%と戻した。4週続落
- ダウ平均51,285.73−0.94%11/4は原油安で+3.03%と大きく上げたが、11/5に−3.44%、金曜も−0.46%
- 日経22557,434.77−9.25%11/4が−1.42%、11/5が−1.79%、11/6は−3,643.13円(−5.96%)と下げ幅は終値で過去3番目(NHK)。6万円を割り込んだ。11/3は文化の日で休場
Crypto
- BTC/USD76,006−2.36%11/4に8万ドルを上回ったが(Kitco)、株の急落で戻した。金が上げた週に下げ、現物ETFは週間12.82億ドルの流出
Vol
- VIX25.64+32.03%11/5に28.18へ+69.66%と跳ね、金曜の株の戻りで25台へ下げた
- 日経VI44.60+31.87%VIXの1.7倍。東京の警戒は米国より強い
- MOVE指数92.77−7.42%株の変動率が跳ねた週に、債券の変動率は下がった
クレジット
- 米HYスプレッド3.48%+4bp11/5時点。株の急落の日でも4bpの拡大にとどまり、社債には売りが広がっていない
週のレシオ
直近20週金/銀
78.66−0.7579.4から78.7へ小さく低下。前週に銀が売られすぎた分を、金とほぼ同じ率で戻しただけ。商品全体の買いというほどの動きではなく、換金売りが止まったことを示す
金が銀の何倍か。上がる週は不安の買い、下がる週は商品全体の買い
金/原油
44.86+7.4237.4から44.9へ大きく上昇。原油が停戦への期待で13%近く下げ、金が上げた。供給とインフレの材料が抜け、金にとっての逆風の一つが外れた
金1オンスで買える原油の量(バレル)。上がる週は景気の不安、下がる週はインフレ・供給の材料
金/銅
655+52604から655へ上昇。銅は株と一緒に売られ、金は買われた。AI規制への警戒と株の急落が、景気の先行きへの不安として銅に出た
金と景気の代理(銅)の比。上がる週は景気への不安、下がる週は景気への期待
いずれも COMEX 金先物(GC=F)と、銀(SI=F)・WTI原油(CL=F)・銅(HG=F、ドル/ポンド)の期近先物の比。各週の最後の取引日の値(Yahoo Finance)から算出。 期近の限月が替わる週は、比が限月をまたぐ。
ポジションとフロー
FOMC の織り込み
- 12/9 の会合4.07%+19.0bp0.25%の利上げ 0.76 回分
- 1/27 の会合4.12%+5.0bp0.25%の利上げ 0.20 回分
FF金利先物(CBOT)から算出した会合後の政策金利の見込み。起点は実効FF金利 3.88%(11/5、FRED EFFR)。 CME FedWatch と同じ考え方の算出値で、FedWatch の数値そのものではない。
CFTC 建玉(ネットの投機ポジション、4週)
- 金(COMEX)マネージド・マネー+103,614前週比 −1,948
- 銀(COMEX)マネージド・マネー+4,035前週比 +714
- WTI原油(NYMEX)マネージド・マネー+21,728前週比 −9,400
- 円(CME)レバレッジド・ファンド−14,817前週比 −187
CFTC Commitments of Traders。火曜時点の建玉で、金曜に公表。金・銀・原油はマネージド・マネー、円はレバレッジド・ファンド。単位は枚。
ETF の資金フロー
- BTC現物ETF(米国・合計)−1,281.7百万ドル11/2 −398.6 / 11/3 −115.6 / 11/4 +74.6 / 11/5 −430.2 / 11/6 −411.9 Farside Investors
未確認:金ETF(GLD)の保有量、銀ETF(SLV)の保有量
週次相関
直近8週- 金 × 実質金利(TIPS10年)−0.01ほぼ無関係
- 金 × ドル指数 DXY+0.06ほぼ無関係
- 金 × Nasdaq総合−0.32弱い逆相関
- 金 × BTC/USD−0.28弱い逆相関
金(COMEX 先物 GC=F)の週間変化率と、各指標の週間変化(実質金利は bp、ほかは変化率)の相関係数。−1 は逆向き、+1 は同じ向きにそろって動いたことを示す。 8週は短く、1週の大きな動きで符号が変わる。因果関係は示さない。算出:Yahoo Finance・FRED DFII10・CoinGecko。各週の最後の取引日どうしの変化
- レジスタンス4,170Kitcoで XS.com のマサブニ氏が挙げる抵抗帯(4,150〜4,170)の上端。上抜ければ戻りの流れがはっきりする
- レジスタンス4,150同じ抵抗帯の下端。COMEX先物の週足の高値4,155.8もこの帯にある
- レジスタンス4,089同氏が挙げる二つ目の上値。11/5の読み取り4,087.97とほぼ同じ水準
- 現在値4,07111/6のUSAGOLD読み取り(4,070.59)。確定値は月曜の日次で照合する。週間+5.04%
- サポート4,032同氏が挙げる最初の支持(4,032→4,016)
- サポート4,000心理的な節目。金曜の雇用統計のあとも上で保った(Kitco)
- サポート3,9694,000ドルを割った場合に同氏が挙げる下値(3,985→3,969)
- レジスタンス52.95今週の週足の高値(COMEX先物、52.950)
- 現在値51.80COMEX先物の11/6清算値(51.803)。週間+5.51%
- サポート50.52Kitcoが挙げる下値の目処(50.515)
- サポート48.55今週の週足の安値(48.550)
- レジスタンス158.77今週の週足の高値
- 現在値158.4511/6のニューヨーク17時。週間+0.59%
- サポート157.6611/5のニューヨーク17時。株の急落と日銀の議事要旨で円が買われた水準
- サポート157.25今週の週足の安値
週足のレンジ
- 金(COMEX 先物)高値4,155.8安値3,889.0値幅266.8始値 3,890.0 → 4,074.9
- 銀(COMEX 先物)高値52.950安値48.550値幅4.400始値 50.100 → 51.803
- USD/JPY高値158.77安値157.25値幅1.52始値 157.68 → 158.45
Yahoo Finance(金・銀は COMEX 期近先物の日足、ドル円は1時間足でニューヨーク17時区切り)。金の現物(USAGOLD)とは水準が少し違う。
週の核心テーマ
一つの選挙の結果が、二つの方向に資金を動かした。原油からは「戦争が終わる」として資金が抜け、AI関連株からは「規制が強まる」として資金が抜けた。金は前週と違い、株の急落の日にも現金化される側に回らなかった。
週の前半は原油から始まった。11/2にイランが対話での解決に傾き、WTIは−7.36%の96.46ドル(CNBC)。11/3の中間選挙で民主党が上下両院の多数を確保すると、バンス副大統領は「負けた理由は戦争だ」と投稿し、市場はイラン戦争の終わりに近づくと読んだ(CNBC)。WTIは11/4に88.12ドルまで下げ、週間では104.12ドルから90.83ドルへ−12.76%。期待インフレ率(10年BEI)は2.34%から2.23%へ11bp下がった。金は11/4に+3.39%と跳ね、USAGOLDの読み取りで10/30確定値3,875.20ドルから4,070.59ドルへ+5.04%と、4,000ドル台を取り戻した。
流れが変わったのは11/5である。民主党の議会がデータセンターの建設とAI開発への規制を強めるとの見方が広がり、半導体株指数は−12.25%、Nasdaqは−5.52%で調整局面に入った(Fox Business、CNBC)。翌11/6の東京では日経225が−3,643.13円(−5.96%)の57,434.77円と、下げ幅は終値で過去3番目になった(NHK)。それでも金は11/5に読み取りで4,087.97ドルと小幅に上げた。10/30には株安が金・銀の換金売りを呼んだが、今週はそうならなかった。
前週(第44週)のシナリオと照らすと、着地は bull の目処(3,910を上抜けて4,000ドル、続いて4,068)に届いた。ただし経路は想定と違う。bull の発動条件の一つ「雇用統計が予想を下回る」は外れ、金曜の雇用統計は16.5万人と予想を大きく上回った。効いたのは「中間選挙が大きな混乱なく終わる」と原油の急落で、実質金利は2.6%を割るどころか2.63%へ上がった。金を押し上げたのは金利の追い風ではなく、原油が運んでいたインフレと利上げの逆風が弱まったことである。AI関連株の売りは止まらず、その条件も外れた。
今週の主要イベント振り返り
① 中間選挙で民主党が上下両院を制し、原油が13%近く下げる(11/2〜11/4)
11/2はイランが対話での解決に傾いたことで原油が急落し、WTIは96.46ドル(−7.36%)、Brentの1月限は104.77ドル(−7.63%)で引けた(CNBC)。11/3は投票日で、米国によるイランのケシュム島への攻撃が伝えられた一方、カタールは仲介を続けると表明し、WTIは96.09ドルと小幅に下げた(CNBC)。
11/3の中間選挙では民主党が上下両院の多数を確保した(AP・CNBC)。市場はイランとの戦争の終わりに近づくと読み、11/4はWTIが88.12ドル(−8.29%)、Brentが94.62ドル(−8.67%)と3日続けて下げた(CNBC)。ドルはユーロに対して売られ、ドル指数は読み取りで101.51へ下げた。ダウは+3.03%と大きく上げ、防衛・石油株は売られた。
11/5からはホルムズ海峡でタンカーへの攻撃が続いて戻し、金曜のWTIは+0.31ドルの90.83ドル、Brentは+0.03ドルの98.32ドルで引けた。イランがカタールを通じて核の提案を米国に送ったとロイターが伝えた一方、英海事貿易機関(UKMTO)のデータでは船舶への攻撃はほぼ過去最多のペースで続いている(CNBC)。
原油からは戦争の上乗せ分が抜けた。ただ攻撃は止まっておらず、協議は正式な合意に至っていない。投機筋の買い越しも同じ向きで、11/3時点で約2.2万枚と前週から3割減った。
情報元:CNBC、Spectrum News ほか3件
- CNBC(Crude oil prices sell off more than 7% on Iran peace talk hopes ahead of U.S. midterms、2026/11/02)
- CNBC(2026 midterm election results: House, Senate live updates、2026/11/04)
- CNBC(Crude oil prices fall below $90 a barrel as Vance blames GOP election defeat on Iran war、2026/11/04)
- CNBC(Oil prices tumble for the week as investors weigh Iran conflict risk after midterm elections、2026/11/06)
- Spectrum News(AP: Democrats win control of Senate, House in blow to Trump、2026/11/03)
② AI規制への警戒で株が急落、日経は歴代3位の下げ幅(11/5〜11/6)
11/5の米国市場は、前日の選挙後の上げを一日で失った。民主党の議会がデータセンターの建設やAI開発への規制を強め、AIの設備投資が遅れて高くつくとの見方が広がった(Fox Business、CNBC)。半導体株指数は−12.25%、エヌビディアは−9.26%、Nasdaqは−5.52%、S&P500は−4.36%で、VIXは28.18へ+69.66%と跳ねた。
翌11/6の東京は全面安になった。日経225は一時4,000円を超えて下げ、終値は−3,643.13円(−5.96%)の57,434.77円。下げ幅は終値で過去3番目で、6万円を割り込んだ(NHK)。週間では63,290.11円から−9.25%、日経VIは44.60とVIXの1.7倍に上がった。
金曜の米国は戻した。Nasdaqは+1.09%、S&P500は+0.31%、ダウは−0.46%(Yahoo Finance)。ただS&P500は週間で6月以来の大きな下げになり、テクノロジー株とエネルギー株は週間でそれぞれ7%、11%下げた(Yahoo Finance)。具体的な規制の法案が出たわけではなく、新しい議会は1月からである。
売られたのは規制の見通しで、中身はまだ無い。米HYスプレッドは11/5時点で4bpの拡大にとどまり、社債には売りが広がっていない。株の中での逃げであって、信用不安を伴うリスクオフではない。
情報元:CNBC、Fox Business、NHK ほか1件
- CNBC(Dow drops 1,800 points; Nasdaq tumbles into correction territory on AI tech wreck: Live updates、2026/11/05)
- Fox Business(Nasdaq tumbles 5%, Dow plunges more than 1,800 points、2026/11/05)
- NHK(日経平均株価 6万円割れ 値下がり幅は終値として過去3番目、2026/11/06)
- Yahoo Finance(Stock market today: Nasdaq and S&P 500 rebound, Dow slips to cap bruising week for AI stocks、2026/11/06)
③ 金曜の雇用統計は16.5万人、12月の利上げ観測が戻る(11/5〜11/6)
11/5の株の急落で、12月の利上げ確率は82.7%から70.1%へ下がり(CME FedWatch、CNBC)、2年債は4.46%へ12bp下げた。同じ日に英中銀は政策金利を0.25ポイント上げて4.00%とし、ベイリー総裁は中東の紛争が解決しない限り最後の利上げにはならないとの考えを示した(FXStreet)。
11/6の米10月雇用統計は、非農業部門の雇用者数が16.5万人と予想の6.5万人を大きく上回った。失業率は4.2%から4.1%へ下がり、平均時給は前月比+0.4%と予想の+0.3%を上回った。8月と9月も合わせて8.4万人上方修正された(Kitco、Yahoo Finance)。2年債は発表後に4.53%へ約6bp上げ、ドルは買われた(Kitco)。Kitcoは雇用の強さが12月の利上げの論拠を固めたと書いた。
金は発表後に4,050.95ドル(−0.89%)まで下げたが(Kitco)、USAGOLDの読み取りで4,070.59ドルと4,000ドル台を保って越週した。Kitcoは夕方の記事で、強い雇用統計のあとも金は4,000ドルの節目を保ったと書き、次の試しを来週の物価統計に置いた。
株安で削られた利上げ観測を、雇用統計が戻した。FF金利先物からの算出では12月の利上げは0.76回分と、前週の0.70回分をわずかに上回った。株が週間で大きく下げても、利上げの見通しは下がっていない。
情報元:Kitco、FXStreet、USAGOLD ほか1件
- Kitco(Gold falls as U.S. payrolls surge by 165,000, strengthening December Fed hike case - Kitco AM Report、2026/11/06)
- Kitco(Gold price holds critical $4,000 support, but strong U.S. jobs data and inflation risks threaten recovery、2026/11/06)
- FXStreet(BoE recap: A divided hike and a warning that the energy shock is not over、2026/11/05)
- USAGOLD(Daily Gold Price History)
今週の資金フロー構造
第一の流れは、原油から戦争の上乗せ分が抜けたことである。WTIは−12.76%、期待インフレ率は−11bpで、米10年債の8bpの低下はほぼすべてが期待インフレ率の低下だった。実質金利はむしろ3bp上がった。CFTCの建玉では原油のマネージド・マネーの買い越しが10/13の約4.1万枚から毎週減り、11/3は約2.2万枚とほぼ半分になった。金/原油レシオは37.4から44.9へ大きく上がり、金にとって最大の逆風だった「原油高 → インフレ → 利上げ」の連鎖が弱まった。
第二の流れは、AI関連株と日本株からの逃げである。11/5の半導体株の投げは翌日の東京で増幅され、日経225は週間−9.25%とNasdaq(−3.37%)の3倍近く下げた。銅は−3.72%、BTCは−2.36%と株と一緒に売られ、BTC現物ETFは週間12.82億ドルの流出になった。金/銅レシオが604から655へ上がったのも、株の急落が景気の先行きへの不安として銅に出たことを示す。それでも米HYスプレッドは4bpの拡大にとどまり、MOVE指数は−7.42%と債券の変動率は下がった。株の中での売りであって、金融全体の緊張ではない。
第三に、金・銀の換金売りが止まった。金/銀レシオは79.4から78.7へ小さく下がり、銀は前週に売られすぎた分を金とほぼ同じ率で戻した。投機筋の買い越しは11/3時点で金が約10.4万枚と小さく減り、銀は約4,000枚と小さく増えた。建玉を積み増す買いではなく、売りが止まった戻りである。直近8週の相関は金と実質金利で−0.01、ドル指数で+0.06とほぼゼロ、Nasdaqとは−0.32で、今週の金は株と逆に動いた。FF金利先物からの算出では12月の利上げは0.76回分、1月はさらに0.20回分を織り込み、利上げの見通しは下がっていない。金の上げは利上げ観測の後退ではなく、原油の逆風が抜けた分である。
総括:民主党の勝利は、原油には停戦の期待、AI関連株には規制の警戒として効いた。原油が抜けて期待インフレ率が下がり、金は株の急落でも現金化されずに4,000ドル台へ戻った。残る逆風は、雇用統計で戻った12月の利上げ観測と、下がらない実質金利である。
情報元:CFTC、Farside Investors、FRED ほか2件
来週の備え(11/9〜11/13)
最重要イベント
最も重いのは11/10の米10月CPIである。予想は総合が前月比+0.3%(前回+0.6%)、コアが+0.2%(前回+0.3%)で、今回は前年比の数字は公表されない(Newsquawk)。雇用統計の強さで12月の利上げは算出で0.76回分を織り込んでおり、コアが予想を上回れば確実視に近づき、下回れば株安で一度下がった観測がまた削られる。
11/13には米10月PPIが続き、予想は前月比+0.4%(前回+1.3%)、コアが+0.3%(Newsquawk)。11/11は復員軍人の日で米国の債券市場が休場になり、CPIの反応は株とドルが先に受ける。
株では11/12の引け後にシスコとアプライド・マテリアルズが決算を出す(StockTitan)。11/10の引け後にはAIの計算資源を貸すコアウィーブも続く。11/5に投げられたAI関連の設備投資の見通しを、企業の側から確かめる最初の機会になる。エヌビディアの決算は11/17で、来週ではない(StockTitan)。
国内政治・政策の波乱要因
11/10に日銀の10月会合の「主な意見」が出る(Newsquawk)。11/5の9月会合の議事要旨では利上げを続けることに委員がそろい、円が買われた(FXStreet)。「主な意見」で12月の利上げに前向きな声が多ければ、日米の金利差の縮小として円の買い材料になる。
日本株は11/6に歴代3位の下げ幅を記録した直後で、11/13には三菱UFJ・三井住友・みずほの中間決算が出る(StockTitan)。急落のあとの銀行株の受け止めが、日経225の下げが半導体にとどまるか、金融株にも広がるかを示す。
地政学シナリオ
イランはカタールを通じて核の提案を米国に送ったと伝えられたが、正式な合意は発表されていない。ホルムズ海峡では11/5にもタンカーへの攻撃が伝えられ、UKMTOのデータでは船舶への攻撃はほぼ過去最多のペースで続く(CNBC)。原油は戦争が終わる期待で戦争の上乗せ分を吐き出したが、攻撃そのものは止まっていない。
協議が進めば、原油安 → 期待インフレ率の低下 → 利上げ観測の後退と、今週の金の追い風が続く。逆に協議が崩れて攻撃が増えれば、今週抜けた分がそのまま戻り、Brentは100ドル台へ戻る。11/10の米EIAの短期エネルギー見通し、11/11のOPEC月報、11/13のIEA月報が、供給の見方を順に示す。
日経・円の焦点
日経225は週間−9.25%の57,434.77円で越週した。11/6の下げ幅は−3,643.13円と終値で過去3番目で、6万円を割り込んだ(NHK)。日経VIは44.60とVIXの1.7倍で、東京の警戒は米国より強い。金曜の米国ではNasdaqが+1.09%と戻しており、週明けはその戻りを受ける。
ただ売りの理由は規制の見通しで、来週中に答えは出ない。シスコとアプライド・マテリアルズの決算が半導体の需要の見方を変えない限り、戻りは限られると見る。
予想レンジ:上限 60,000円 〜 下限 55,500円
レンジは編集部の想定で、上限は6万円の節目と11/5の終値(61,077.90円)までの戻りの途中、下限は11/6の終値から約3%下げる場合の目安として置いた。
金・銀・ドル円の焦点
金はUSAGOLDの読み取りで4,071ドル、COMEX先物は週足で4,155.8〜3,889.0ドル。XS.comのマサブニ氏はKitcoで、上値を4,064・4,089ドル、上抜けの関門を4,150〜4,170ドル、支持を4,032・4,016ドルと4,000ドルの節目に置く。株の急落の日も換金売りが出なかったぶん下値は固いが、CPIが強ければ実質金利の上げで4,000ドルを試す。
銀は週足で48.550〜52.950ドルと4ドル超振れ、金とほぼ同じ率で戻した。投機筋の買い越しは約4,000枚と小さく、どちらかに傾けば値が走りやすい。
ドル円は週足で157.25〜158.77円。11/5に株安と日銀の議事要旨で157円台半ばまで円が買われたが、雇用統計で158円台半ばへ戻した。CPIで米金利が動けば、その方向にそのまま振れる。
金の予想レンジ:上限 4,170ドル 〜 下限 3,960ドル 銀の予想レンジ:上限 54.00ドル 〜 下限 49.00ドル ドル円の予想レンジ:上限 159.50円 〜 下限 156.50円
いずれも編集部の想定で、金の上限はマサブニ氏の抵抗帯の上端(4,170ドル)、下限は同氏が4,000ドル割れで挙げる3,969ドルと3,965〜3,960ドルの押し目の帯。銀の上限は今週の高値52.95ドルを約1ドル上抜ける場合、下限は今週の安値48.55ドルの手前。ドル円は今週の週足のレンジを上下に約0.7円ずつ広げて置いた。
情報元:Newsquawk、FinancialJuice、StockTitan ほか3件
- Newsquawk(Week Ahead in Focus 9-13th November 2026、Global-View経由)
- FinancialJuice(Week Ahead: Economic Indicators 9th-13th November - US)
- StockTitan(Earnings Calendar for the Week of November 9, 2026)
- Kitco(Gold price holds critical $4,000 support, but strong U.S. jobs data and inflation risks threaten recovery、2026/11/06)
- FXStreet(Japanese Yen outperforms as US tech rout and hawkish BoJ minutes lift demand、2026/11/05)
- CNBC(Oil prices tumble for the week as investors weigh Iran conflict risk after midterm elections、2026/11/06)
来週のシナリオ
3 案11/10のCPIがコアで前月比+0.2%以下、11/13のPPIも予想(+0.4%)を下回る。カタール経由のイランの提案で協議が進み、Brentが100ドルを下回ったまま。11/12のシスコ・アプライド・マテリアルズの決算でAI関連の売りが止まる
12月の利上げの織り込み(算出で0.76回分)が下がる → 2年債と実質金利が下がり、雇用統計で買われたドルが戻る → 原油安で抜けたインフレの逆風に金利の追い風が加わり、金は4,150〜4,170の抵抗帯を試す
価格目処4,089と4,150を上抜けて4,170、続いて4,200ドルの節目
CPI・PPIはおおむね予想どおりで、12月の利上げの織り込みは0.7〜0.8回分にとどまる。原油は協議とタンカー攻撃の報道に振れて、WTIは85〜95ドル。AI関連は選別が続くが、11/5のような投げは繰り返さない
雇用の強さで実質金利は2.6%台に残る → 金利の追い風は弱いが、原油安でインフレの逆風も弱い → 今週、株の急落でも換金売りが出なかったぶん下値は固く、金は4,000ドル台で動く
価格目処4,016〜4,129のレンジ(中心は今週末の4,071〜4,089)
CPIのコアが前月比+0.3%以上で、PPIも強い。12月の利上げが確実視される。あるいはホルムズ海峡の攻撃が増え、協議が崩れてBrentが100ドルを超える。AI関連の売りが再び強まり、日経225が今週の安値を割る
利上げの確実視 → 2年債と実質金利が上がり、ドル高 → 原油高が重なれば期待インフレ率も戻る → 株の損失を埋める換金売りが、10/30のように金・銀にも及ぶ → 金は4,000ドルの節目を割る
価格目処4,000割れで3,985、続いて3,969
来週の主要スケジュール
★ は最重要- 11/9(月)
- 中国10月CPI・PPI
- ユーログループ、COP31(〜11/20)
- 決算:バリック、オキシデンタル・ペトロリアム
- 11/10(火)
- ★米10月CPI(予想 前月比+0.3%、コア+0.2%)
- 日銀10月会合の主な意見、中国10月貿易収支
- 米EIA短期エネルギー見通し、決算:コアウィーブ
- 11/11(水)
- 米国は復員軍人の日で債券市場が休場(株式は取引あり)
- OPEC月報
- 11/12(木)
- 英7〜9月期GDP
- 米10月中古住宅販売、新規失業保険申請
- ★決算:シスコ、アプライド・マテリアルズ(引け後)
- 11/13(金)
- ★米10月PPI(予想 前月比+0.4%、コア+0.3%)
- ユーロ圏7〜9月期GDP改定値、IEA月報
- 決算:三菱UFJ、三井住友、みずほ
- CFTC建玉(COT)の公表(火曜時点)
中立。今週、原油は−12.76%、期待インフレ率は−11bpと金の逆風が一つ外れ、金は+5.04%で4,000ドル台を取り戻した。11/5の株の急落でも換金売りに押されなかったことが、前週との一番の違いである。ただ金曜の雇用統計は16.5万人と強く、12月の利上げの織り込みは0.76回分へ戻り、実質金利も2.63%と下がっていない。来週は11/10のCPIと11/13のPPIが、利上げの織り込みを決める。4,000ドルを保てるかで向きを見る。