第43週|金は週間−4.1%で4,000ドルを割り3,996ドル。実質金利は−8bp、ドルも横ばいでも換金売りが勝った。資金はAI株から米国債へ逃げ、Brentは+6.2%の116.72ドルと半年ぶりの高値
AI投資への不安が10/22に再燃し、米10年債は1日で17bp下げて5%を割った。週間では5.09%から5.00%、実質金利は2.74%から2.66%へ下がり、ドル指数もほぼ横ばいだった。それでも金は4,166ドルから3,996ドル(読み取り)へ−4.1%と7月以来の安値に沈んだ。Brentはホルムズ海峡とサウジへの攻撃で116.72ドルと4月末以来の高値、日経225は−4.03%。
- 金の現物は10/16確定値4,165.61ドルから10/23読み取り3,995.88ドルへ−4.07%(USAGOLD)。10/22に−2.81%と急落し、10/23は日中に4,000ドルを割って7月以来の安値をつけた(Reuters、FinanceFeeds経由)。実質金利が下がりドルも動かない週に、金は大きく売られた。
- AI関連株は10/22にメタ(約7%安)とLam Researchの決算をきっかけに売られ、Nasdaqは6月以来の大きな下げ(−2.60%)。資金は米国債へ逃げ、10年債は1日で17bp下げて4.96%と5%を割った。週間では5.09%→5.00%(−9bp)、実質金利は2.74%→2.66%(−8bp)(財務省)。
- 原油は中東の攻撃で上げた。Brent(12月限)は週間+6.2%の116.72ドルで、4月29日以来の高い清算値。WTI(12月限)は+4.3%の103.27ドル(CNBC、Newsquawk)。金曜は原油高が運輸株などに広がり、ダウは−1.23%と下げた。
- 週間ではS&P 500が−0.47%、Nasdaqが−0.71%と2週続落、ダウは+0.41%と3週続伸。日経225は−4.03%の62,693.16円、日経VIは32.17→38.25。10月FOMCの利上げ確率は約5%へ下がった一方、12月の利上げは約8割が織り込まれている(Bloomberg、Reuters)。
- ドル円は157.99(10/16)→156.81円(10/23、いずれもニューヨーク17時)と週間−0.74%の円高(Yahoo)。ドル指数の10/23終値(読み取り101.75)、金の10/23確定値、BTC現物ETFの資金フロー、日本10年債の10/23分は未確認。
各資産の週次パフォーマンス
9 銘柄貴金属
- 金(XAU/USD)3,996−4.07%前週末4,165.61(USAGOLD確定値)から10/23読み取り3,995.88(山岳部時間18:04)へ−169.73ドル。確定値で4,140.83→4,124.85→4,140.75と4,141ドルで2度止められたあと、10/22に−116.37ドル(−2.81%)の4,024.38、10/23も続落し、日中に4,000ドルを割った(安値は未確認)。Reutersは週間で4%近い下げと伝えた(FinanceFeeds経由)
金利
- 米10年債利回り5.00%−9bp前週末5.09%(財務省)。5.15→5.12→5.13→4.96→5.00%。10/22の−17bpは2年余りで最大の1日の下げで、1か月ぶりに5%を割った(Yahoo Finance、CNBC)。2年債は4.74→4.69%(−5bp)、30年債は5.43→5.33%(−10bp)。実質金利は2.74→2.66%(−8bp)、期待インフレ(10年BEI)は2.35→2.34%(FRED)で、下げはほぼ実質側
為替
- ドル指数 DXY101.75前後−0.1%前後前週末101.84(Yahoo DX-Y.NYB終値)。週の終値は101.98(10/19)・101.73・101.78・101.61と102を超えなかった。10/23はニューヨーク16:59の読み取り101.75で、終値は未確認。株安でも逃避の買いは入らなかった
- USD/JPY156.81−0.74%前週末157.99から−1.17円の円高(ともにニューヨーク17時、Yahoo JPY=X 1時間足)。週の前半は158.46(10/19)・158.14・158.13と158円台で動き、10/22に156.76へ1.37円下げた。10/22の東京17時は157.23円と前日から89銭の円高で、157.50円の下抜けで損切りの売りが出たと伝えられた(ロイター、BigGo Finance経由)。米金利の低下で日米の金利差が縮み、円が逃避先として買われた
商品
- WTI原油103.27+4.3%12月限の清算値(CNBC、Newsquawk)。前週末の12月限99.02から。11月限は10/20に満期を迎え、日中に110.48ドルまで振れた。12月限は97.15(10/21)まで下げたあと、10/22に+2.32ドル、10/23に+3.80ドルと2日で6ドル超上げた。Brent(12月限)は109.86→116.72ドルで+6.2%、3週続伸
株
- S&P 5007,623.68−0.47%前週末7,659.44から−35.76。10/21の7,757.17まで3日続伸したが、10/22に−1.21%と7月以来の下げ、10/23も−0.52%で2週続落(Yahoo Finance)。金曜は売りがAI関連の外にも広がった
- Nasdaq総合25,955.34−0.71%前週末26,140.03から−184.69。週明けに半導体の買い戻しで+1.11%、10/21も+1.05%と戻したが、10/22にメタとLam Researchの決算で−2.60%と6月以来の大きな下げ(Reuters)。週間では2週続落。ダウは52,215.16で+0.41%と3週続伸し、金曜だけは−1.23%
- 日経22562,693.16−4.03%前週末65,324.29から−2,631円。5日のうち4日下げ、10/22に−2.65%(−1,713円)と米国より先にAI関連が売られた。10/23も−0.34%。日経VIは32.17→38.25(+18.9%)で、VIXの倍近い水準に上がった(Yahoo Finance)
Vol
- VIX19.45−2.7%前週末19.99。18.44→17.31→16.68と3日続けて下がったあと、10/22に19.03、10/23に19.45(Yahoo Finance)。週間では小幅低下だが、週の後半に恐怖が戻った。日経VIの38台とは倍近い差がある
週のレシオ
直近20週金/銀
74.62+1.26金が銀の何倍か。上がる週は不安の買い、下がる週は商品全体の買い
金/原油
38.81−2.42金1オンスで買える原油の量(バレル)。上がる週は景気の不安、下がる週はインフレ・供給の材料
金/銅
619−21金と景気の代理(銅)の比。上がる週は景気への不安、下がる週は景気への期待
いずれも COMEX 金先物(GC=F)と、銀(SI=F)・WTI原油(CL=F)・銅(HG=F、ドル/ポンド)の期近先物の比。各週の最後の取引日の値(Yahoo Finance)から算出。 期近の限月が替わる週は、比が限月をまたぐ。
ポジションとフロー
FOMC の織り込み
- 10/28 の会合3.91%+2.5bp0.25%の利上げ 0.10 回分
- 12/9 の会合4.10%+19.0bp0.25%の利上げ 0.76 回分
FF金利先物(CBOT)から算出した会合後の政策金利の見込み。起点は実効FF金利 3.88%(10/23、FRED EFFR)。 CME FedWatch と同じ考え方の算出値で、FedWatch の数値そのものではない。
CFTC 建玉(ネットの投機ポジション、4週)
- 金(COMEX)マネージド・マネー+104,206前週比 −2,883
- 銀(COMEX)マネージド・マネー+3,505前週比 −2,114
- WTI原油(NYMEX)マネージド・マネー+36,187前週比 −4,387
- 円(CME)レバレッジド・ファンド−22,890前週比 +10,783
CFTC Commitments of Traders。火曜時点の建玉で、金曜に公表。金・銀・原油はマネージド・マネー、円はレバレッジド・ファンド。単位は枚。
ETF の資金フロー
- BTC現物ETF(米国・合計)+301.2百万ドル10/19 +526.7 / 10/20 +23.2 / 10/21 +524.8 / 10/22 −635.6 / 10/23 −137.9 Farside Investors
週次相関
直近8週- 金 × 実質金利(TIPS10年)−0.03ほぼ無関係
- 金 × ドル指数 DXY−0.02ほぼ無関係
- 金 × Nasdaq総合−0.02ほぼ無関係
- 金 × BTC/USD−0.28弱い逆相関
金(COMEX 先物 GC=F)の週間変化率と、各指標の週間変化(実質金利は bp、ほかは変化率)の相関係数。−1 は逆向き、+1 は同じ向きにそろって動いたことを示す。 8週は短く、1週の大きな動きで符号が変わる。因果関係は示さない。算出:Yahoo Finance・FRED DFII10・CoinGecko。各週の最後の取引日どうしの変化
- レジスタンス4,14110/19(4,140.83)と10/21(4,140.75)のUSAGOLD確定値。2度止められ、10/22の急落の起点になった
- レジスタンス4,12510/20のUSAGOLD確定値(4,124.85)。週の前半の下値で、10/22に割り込んだ
- レジスタンス4,02410/22のUSAGOLD確定値(4,024.38)。急落した日の引けの水準
- 現在値3,99610/23のUSAGOLD読み取り(山岳部時間18:04、3,995.88)。確定値は月曜の日次で照合する。週間−4.07%
- サポート3,950複数のテクニカル分析が挙げる3,940〜3,960ドルの帯(FinanceFeeds)
- サポート3,900夏に反発した4,000〜3,900ドルの支持帯の下端(Kitco、Jesse Colombo氏)
週足のレンジ
- 金(COMEX 先物)高値4,211.2安値3,989.1値幅222.1始値 4,185.0 → 4,007.9
- 銀(COMEX 先物)高値57.706安値53.711値幅3.995始値 57.005 → 53.711
- USD/JPY高値158.60安値156.07値幅2.53始値 157.91 → 156.81
Yahoo Finance(金・銀は COMEX 期近先物の日足、ドル円は1時間足でニューヨーク17時区切り)。金の現物(USAGOLD)とは水準が少し違う。
週の核心テーマ
資金は株から米国債へ逃げたが、金には向かわなかった。金は逃避先ではなく、現金をつくるために売られる側に回った。
10/22、メタの決算とLam Researchの決算をきっかけにAI投資への不安が再燃し、Nasdaqは−2.60%と6月以来の大きな下げになった(Reuters)。資金は米国債へ逃げ、10年債利回りは1日で17bp下がって4.96%と、2年余りで最大の下げ幅で5%を割った(Yahoo Finance)。週間では5.09%から5.00%(−9bp)、実質金利は2.74%から2.66%(−8bp)。期待インフレ(10年BEI)は2.35%から2.34%でほぼ動かず、金利の低下はほぼすべて実質金利の側で起きた(財務省、FRED)。ドル指数も101.84から101.75前後(読み取り)とほぼ横ばいだった。
金にとっては追い風がそろった週である。それでも金は4,165.61ドルから3,995.88ドル(読み取り)へ−4.07%と下げ、10/23には日中に4,000ドルを割って7月以来の安値をつけた(Reuters、FinanceFeeds経由)。実質金利が下がるほど、金も下がった。10/22は実質金利が−12bpの日に金が−2.81%と、今週いちばん大きく下げている。BloombergとReutersは、ほかの資産の損失や証拠金を埋めるために貴金属を売る動きを挙げた(FinanceFeeds)。前週の週次で推測として書いた「AI株の損失を埋める換金売り」は、今週、報道でも裏づけられた。
前週(第42週)のシナリオと照らすと、着地は bear の目処(4,106割れで4,000)どおりで、さらに4,000ドルを割り込んだ。発動条件のうち、AI関連の売りの加速とBrentの110ドル上抜けは起きた。VIXは引けで19台にとどまり22.31を超えず、10年BEIも2.4%へは上がらなかった。連鎖も想定と違った。bearは「名目金利の低下が止まって実質金利の下げが一服し、ドルが102台へ戻る」と見たが、実際は実質金利が8bp下がり、ドルは102に届かなかった。金利とドルが追い風のまま、換金売りだけで bear の目処まで届いた。2週続けて、3案はどれも「追い風の中で金が下げる」経路を想定していなかった。
その裏で、原油は中東の攻撃で上げ続けた。Brentは週間+6.2%の116.72ドルと4月29日以来の高い清算値(CNBC)。市場は10月FOMCの利上げをほぼ見送ったが(利上げ確率は約5%、Bloomberg)、12月の利上げは約8割を織り込む(Reuters、Kitco経由)。原油高が12月の利上げ観測を残し、金利低下の追い風を「一時的なもの」に見せている(推測を含む)。
今週の主要イベント振り返り
① AI投資への不安の再燃と、5%を割った米10年債(10/19〜10/23)
週の前半は買い戻しで始まった。10/19にフィラデルフィア半導体指数は+1.6%で8日続落を止め(Globe and Mail/Reuters)、10/21も決算の上振れでNasdaqは+1.05%と戻した。10/21の引け後、メタは7〜9月期の売上高646億ドル(前年比+26%)と年間の設備投資見通し1,350億〜1,450億ドルを示し、時間外では約3%上げた(TipRanks)。
ところが10/22の本取引でメタは約7%下げ、Lam Researchの決算も失望を招いた(Reuters)。Nasdaqは−694.00ポイント(−2.60%)、S&P 500は−1.21%と7月以来の下げ幅で、ダウは+0.02%にとどまった(Kitco、Yahoo Finance)。東京は米国より先にAI関連が売られ、日経225は10/22に−2.65%。金曜の米国は、AI関連の売りは一服したものの原油高が重荷になり、ダウが−1.23%、S&P 500が−0.52%、Nasdaqが−0.21%と3指数がそろって下げた(Yahoo Finance、CNBC)。
10年債は10/22に−17bpの4.96%、金曜は+4bpの5.00%で越週した(財務省)。10月FOMCの利上げ確率は、Bloombergの集計で9月末の37%、今週初めの15%から約5%へ下がった(Yahoo Finance)。ただし12月の利上げは約8割が織り込まれたままで(Reuters、Kitco経由)、債券の買いは利上げの終わりを読んだものではなく、株からの逃避である(推測を含む)。
情報元:
- The Globe and Mail(Nasdaq climbs as chip and AI-linked stocks bounce back、2026/10/19)
- TipRanks(Why Meta Stock Is Rising After Hours, While Tesla Falls、2026/10/21)
- Yahoo Finance(Stock market today: S&P 500, Nasdaq tanks as tech stocks sink amid AI trade worries、2026/10/22)
- Yahoo Finance(Stock market today: Dow sinks 600 points, S&P 500, Nasdaq drop to cap a volatile week, oil prices rise、2026/10/23)
- Kitco/Reuters(Wall St Week Ahead: Earnings flood, Fed meeting pose pivotal tests for rickety AI market rally、2026/10/23)
- 10bmnews/CNBC(10-year Treasury yield drops back to 5% this week as investors seek cover from AI worries、2026/10/23)
- 米財務省(Daily Treasury Par Yield Curve Rates 2026)
② 金の4,000ドル割れ:追い風の中の換金売り(10/19〜10/23)
USAGOLDの確定値で見ると、金は10/19が4,140.83ドル(−0.59%)、10/20が4,124.85ドル(−0.39%)、10/21が4,140.75ドル(+0.39%)、10/22が4,024.38ドル(−2.81%)。10/23は読み取りで3,995.88ドル(−0.71%)。実質金利が+6bpだった10/19に下げたのは素直な反応だが、10/20(−3bp)にも、10/22(−12bp)にも下げた。5日のうち、実質金利の向きどおりに動いたのは10/19と10/21の2日だけだった。
10/23は日中に4,000ドルを割った。安値は出所で確かめられず未確認。Reutersによれば7月20日以来の安値で、銀・プラチナ・パラジウムもそろって下げた(Reuters、FinanceFeeds経由)。KitcoのインタビューでJesse Colombo氏は、AI株の売りに伴う換金売りとFOMC前の警戒を挙げた(10/22)。Capital EconomicsのHamad Hussain氏は、原油高が実質金利を長く高止まりさせ、金の魅力を下げうると述べた(Reuters、FinanceFeeds経由)。
金は「逃避先」ではなく「現金化できる資産」として扱われた。今週の金利低下は株からの逃避で起きており、その株の損失を埋めるために金が売られた。追い風と売り圧力が同じ出来事から生まれている点が、今週の金のいちばん厄介なところである(推測を含む)。BTCも81,524ドル(10/17 09:00 JST)から81,057ドル(10/24 09:04 JST)へ−0.6%で、10/22には8.2万ドルを割った(CoinGecko、Yahoo Finance)。
情報元:
- USAGOLD(Daily Gold Price History)
- FinanceFeeds(Gold Price Today: Below $4,000 as October Hike Odds Near 7%、2026/10/23)
- Kitco(‘Very bizarre action’ as gold retraces entire summer rally to test $4,000/oz、2026/10/22)
- 米財務省(Daily Treasury Par Real Yield Curve Rates 2026)
- CoinGecko(Bitcoin)
③ ホルムズ海峡とサウジへの攻撃、半年ぶりのBrent(10/19〜10/23)
原油は週の中で何度も振れた。10/20はBrentが日中に111.99ドルまで上げたあと、米・イランの合意が近いとの報道で押し戻された(その後Bloombergが報道を不正確と伝えた、Rigzone)。10/21の清算後にはサウジ・アラムコの油田へのドローン攻撃が伝わり、10/22はイランがホルムズ海峡でタンカー7隻が被害を受けたと伝えた(Kitco)。Brentは10/22に113.17ドル、10/23に+3.55ドルの116.72ドルで清算し、4月29日以来の高い清算値で3週続伸となった(Newsquawk、CNBC、Yahoo Finance)。WTI(12月限)は+3.80ドルの103.27ドル。
トランプ大統領は10/23、「終わらせるのか、それとも衰えるのに任せるのか」とイランへの対応を語り、中間選挙後の作戦を否定しなかった(Yahoo Finance、Newsquawk)。駐トルコ米大使は「早ければこの週末にも」米国がイランを攻撃しうると述べたと伝えられた(AFP、Newsquawk経由)。一方で、中東からの原油輸出は戦前の水準を上回ったと大統領自身が述べている(Yahoo Finance)。
情報元:
- Rigzone/Bloomberg(Oil Slips as Iran Talks Fuel Volatility、2026/10/20)
- Rigzone/Bloomberg(Oil Gains After Saudi Oil Field Attack、2026/10/21)
- Kitco(Gold, silver pressured despite lower yields as Hormuz attacks send crude higher、2026/10/22)
- Newsquawk(Week in Focus 26-30th October 2026。CRUDE WRAP: WTI (Z6) settles USD 3.80 higher at USD 103.27/bbl を含む)
- CNBC(Brent crude oil tops $116, a six-month high, as tensions swell in the Middle East、2026/10/23)
- Newsquawk(US Michigan Consumer Sentiment Final (Oct) 48.0 vs. Exp. 46.3 (Prev. 48.1)、2026/10/23)
- Rallies(TGIF data: Flash PMI, UMich、2026/10/23)
- FRED(T10YIE 期待インフレ率10年)
今週の資金フロー構造
第一の流れは、AI関連株から米国債への逃避である。Nasdaqは週間−0.71%にとどまったが、10/22の1日で−2.60%と、週の前半の戻りを消した。日経225は週間−4.03%で、下げの中心は半導体だった。受け皿は米国債で、30年債は−10bp、10年債は−9bp、2年債は−5bpと長い年限ほど買われた。為替では円が買われ、ドル円は10/22の1日で158.13円から156.76円へ下げ、週間では157.99円から156.81円(−0.74%、ニューヨーク17時、Yahoo)。ドル指数はほぼ横ばいで、前週に続き、逃避先はドルではなく米国債と円だった。
第二の流れは、原油と、景気に左右されにくい株への資金である。Brentは週間+6.2%、WTI(12月限)は+4.3%。ダウは週間+0.41%と3週続伸し、Nasdaqの2週続落と分かれた。ただ、金曜に原油が上げると運輸株が売られ、ダウは1日で−1.23%と週の上げの大半を失った。原油高はこれまで株の中の資金の移し替えで済んでいたが、金曜は株全体の重荷に変わり始めた(推測を含む)。
第三に、金は換金売りの供給源になった。実質金利は−8bp、ドル指数はほぼ横ばいで、中東の緊張も高まった。三軸はどれも金の逆風ではないのに、金は−4.07%と4,000ドルを割った。日ごとに見ると、金の大きな下げは10/22(−2.81%)に集中しており、Nasdaqの−2.60%と同じ日である。前週は「株安の日に小さく売られる」形だったが、今週は株安の日に大きく売られた。BTCも10/22に8.2万ドルを割り、週間では−0.6%(CoinGecko)。代替資産はどちらも、株の損失を埋める側に回った。
総括:AI株から逃げた資金は米国債と円に入り、金利は下がった。その同じ株安が、損失を埋めるための金の売りを呼び、金は金利低下の追い風を受けながら4,000ドルを割った。原油高は12月の利上げ観測を残し、金利低下を一時的なものに見せている。来週、AI株の売りが止まるかどうかが、換金売りが止まるかどうかを決める。
なお、次の指標は複数ソースで突き合わせても確定できず、本稿では「未確認」とした。ドル指数の10/23終値(ニューヨーク16:59の読み取り101.75)、金の10/23確定値(読み取り3,995.88ドル)と10/23の日中安値、BTC現物ETFの週間の資金フロー、日本10年債の10/23分(財務省の最新掲載は10/22の2.914%)、FRED VIXCLSの10/23分(本稿のVIXはYahoo Financeの終値)。
情報元:
- 米財務省(Daily Treasury Par Yield Curve Rates 2026)
- 米財務省(Daily Treasury Par Real Yield Curve Rates 2026)
- FRED(T10YIE 期待インフレ率10年)
- USAGOLD(Daily Gold Price History)
- Yahoo Finance(US Dollar Index DX-Y.NYB)
- Yahoo Finance(USD/JPY JPY=X)
- Yahoo Finance(Nikkei 225 ^N225)
- Yahoo Finance(Nikkei Volatility ^NKVI.OS)
- BigGo Finance/ロイター(Tokyo Forex Market: Dollar Falls to Lower 157 Yen Range、2026/10/22)
- CoinGecko(Bitcoin)
- 財務省(国債金利情報 jgbcm.csv)
来週の備え(10/26〜10/30)
最重要イベント
10/28(水)のFOMCと、同じ日の引け後のアルファベット・マイクロソフトの決算。FOMCは政策金利3.75〜4.00%の据え置きが大方の予想で、Reutersの調査では100人中94人が据え置きを見込む(Newsquawk)。9月に全会一致で0.25ポイント引き上げたあとの会合になる。焦点は、約8割が織り込まれた12月の利上げにウォーシュ議長が会見でどう触れるかである(Reuters、Kitco経由)。11/3の中間選挙の1週間前で、Reutersは市場が選挙直前の利上げを疑っていると伝える。
決算は今週メタで売りの引き金になった設備投資が、そのまま問われる。アルファベットとマイクロソフトが10/28、アマゾンが10/29に発表し、S&P 500の約3分の1の企業が決算を出す週になる。ハイパースケーラーの今年の設備投資は約8,000億ドルの見込みで、Reutersは「市場は巨額の投資をする企業に疑わしきは罰せずの姿勢を取っていない」との声を伝える(Kitco経由)。インテル、サンディスク、イーライリリー、エクソン、シェブロン、キャタピラーも週内に決算を出す。
物価では10/29(木)に9月PCEと7〜9月期GDP速報が出る。予想はPCEが前年比3.6%(8月3.4%)、コアが3.1%(同3.0%)、GDPが年率3.0%(Newsquawk)。FOMCの翌日にPCEが出る順番で、会見の示唆がPCEで裏づけられるか崩れるかを1日で見ることになる。
国内政治・政策の波乱要因
焦点は10/29〜30の日銀金融政策決定会合と展望レポートである。日銀は9月に政策金利を1.25%程度へ引き上げたばかりで、今回は据え置きの見通しと伝えられる(テレ東BIZ、TBS)。TBSは、日銀が重視する「基調的な物価上昇率」が2%に達したと判断する公算が大きいと報じた。10/23に出た9月の全国CPIは生鮮食品を除く総合が前年比2.1%と、9か月ぶりに2%を上回った(総務省、時事通信)。会合当日の10/30朝には東京都区部の10月CPIも出る。Newsquawkは、市場が12月の利上げを約8割織り込んでいると伝える。
ドル円は今週、米金利の低下で157.99円から156.81円へ円高に振れた(ニューヨーク17時)。日米の中央銀行がそろって「据え置きつつ12月の利上げを残す」形になれば、金利差の読みは両国の会見の言葉に左右される。国内政治で今週相場を動かした材料は確認できていない。
地政学シナリオ
ホルムズ海峡ではタンカーへの攻撃が続き、サウジの油田と空港も攻撃を受けた。米国とイスラエルが11/3の中間選挙後にイランへの攻撃を再開する計画を立てたとの報道があり(Yahoo Finance)、トランプ大統領は10/23にも作戦の可能性を否定しなかった。駐トルコ米大使の「早ければこの週末」という発言も伝えられている(AFP、Newsquawk経由)。10/27にはイスラエルの総選挙があり、どちらの陣営が政権を握ってもイランへの強硬姿勢は続くとの見方が出ている(Newsquawk)。
週末に軍事行動が起きれば、月曜は原油高から始まる。Brentが120ドルへ向かえば、原油高 → 期待インフレの上昇 → 12月利上げの織り込みの強まり → 実質金利の低下が止まる、という金の逆風の連鎖が動く。逆に交渉の進展が伝われば、原油と期待インフレが同時に下がり、金利低下の追い風が金に届きやすくなる。今週の教訓は、地政学の緊張が高まっても金は買われなかったことで、来週も地政学は金より原油と金利を通じて効くと見る。
日経・円の焦点
日経225は週間−4.03%の62,693.16円で越週した。10/22に−2.65%と米国より先にAI関連が売られ、10/23も−0.34%。日経VIは38.25とVIXの倍近く、東京の警戒は米国より強い。前週から2週で約6,300円下げた。
来週の東京は、10/28(米国時間)のFOMCとアルファベット・マイクロソフトの決算を10/29に、アマゾンの決算と米PCEを10/30に受け、同じ10/30に日銀の決定と東京都区部CPIが重なる。米国の金利低下と円高は輸出株の重荷になり、AI関連の決算は半導体株を左右する。週の後半に材料が集中するため、値幅が出やすい。
予想レンジ:上限 65,000円 〜 下限 61,000円
レンジは編集部の想定で、上限は10/19〜21の終値(64,075〜64,917円)を上抜け、前週末の65,324円に迫る場合の目安、下限は10/22と同じ規模(約−2.7%)の下げが金曜の終値からもう一度起きる場合の目安として置いた。
情報元:
- Newsquawk(Week in Focus 26-30th October 2026: FOMC, BoC, RBNZ, ECB, BoJ Policy Decisions, US PCE)
- Kitco/Reuters(Wall St Week Ahead: Earnings flood, Fed meeting pose pivotal tests for rickety AI market rally、2026/10/23)
- Investrade(Weekly Event Calendar: 10/26/2026 – 10/30/2026)
- テレ東BIZ(日銀 10月利上げ見送りへ 影響見極め)
- TBS/Infoseekニュース(日銀 来週の金融政策決定会合 基調物価は2%到達判断へ 利上げは見送りの公算大)
- 時事通信(9月消費者物価、2.1%上昇 9カ月ぶり2%超、2026/10/23)
- 総務省統計局(消費者物価指数 全国 最新の月次結果の概要)
- Yahoo Finance(Stock market today、2026/10/23)
来週のシナリオ
3 案10/28のFOMCが据え置きで、ウォーシュ議長が12月の利上げを示唆しない。同じ日のアルファベット・マイクロソフトの設備投資計画が受け入れられ、AI関連の売りが止まる。Brentが110ドルを割る
12月利上げの織り込み(約8割)が下がる → 実質金利が2.6%を割り、ドル指数は101台前半へ → 株の損失を埋める換金売りが止まり、2週続けて効かなかった金利とドルの追い風が金に届く
価格目処4,000ドルを回復し4,024、続いて4,125
FOMCは据え置き、12月の判断は開いたまま。決算は銘柄ごとに割れ、AI関連の売りは続くが広がらない。Brentは110〜120ドル、米10年債は4.9〜5.1%、10/29のPCEは予想並み
株安からの逃避で実質金利は2.6%台にとどまる → 原油高が12月利上げの観測を支え、金利低下の追い風は強まらない → 金は換金売りが細る一方で買いも戻らず、4,000ドルを挟んで動く
価格目処3,950〜4,068のレンジ(中心は今週末の3,996〜10/22確定値の4,024)
10/29のPCEが予想(前年比3.6%、コア3.1%)を上回り、ウォーシュ議長が12月の利上げに前向きな姿勢を見せる。決算でAI投資の採算への不安が広がり、VIXが10/16の日中高値22.31を超える。Brentが120ドルに近づく
12月利上げの織り込みが固まり、実質金利の低下が止まる → 株の損失を埋める換金売りが金にも続く → 原油高が期待インフレを押し上げ、金利の追い風が逆風に変わる → 金は3,950ドルの帯を割る
価格目処3,950割れで3,900
来週の主要スケジュール
★ は最重要- 10/26(月)
- 中国共産党の五中全会(〜10/29)
- 独10月Ifo景況感指数
- 10/27(火)
- FOMC(1日目)
- 米9月耐久財受注
- イスラエル総選挙
- 10/28(水)
- ★FOMC政策金利の発表とウォーシュ議長の会見(米国時間14:00/14:30)
- ★決算(アルファベット、マイクロソフト)
- カナダ銀行・NZ準備銀行の政策金利、英秋季予算、豪9月CPI
- 10/29(木)
- ★米7〜9月期GDP速報、9月PCE物価指数
- ECB理事会の政策金利
- 決算(アマゾン)
- 10/30(金)
- ★日銀金融政策決定会合(10/29〜30)、展望レポート
- 東京都区部10月CPI、日本9月失業率
- ユーロ圏・独・仏の7〜9月期GDP、独10月CPI
ややリスクオフ。今週、実質金利は8bp下がり、ドル指数もほぼ動かなかったのに、金は−4.1%で4,000ドルを割った。株の損失を埋める換金売りが、金利とドルの追い風を2週続けて上回った。来週は10/28のFOMCとアルファベット・マイクロソフトの決算、10/29のPCEとアマゾンの決算が2日に集まる。AI株の売りが止まるかが換金売りの行方を、ウォーシュ議長の12月の示唆が金利の追い風の続き方を決めると見る。