2026/10/01(木)|PCEが予想下回り利上げ確率は急低下、それでも米30年債は5.64%と高値更新。金は4,219ドルまで上げたあと4,156ドルへ反落、月間では6.7%の下落
9/30の米国は、8月PCEが前年比3.4%と予想の3.7%を下回り、10月利上げの織り込みが約70%から35〜40%前後へ急低下した。それでも米10年債は5.30%、30年債は5.64%前後と高値圏で引け、S&P500は−0.25%、ダウは−0.86%。金はPCE後に4,219ドルまで上げたが4,156ドル(−0.70%)で引け、9月は6.7%下げた。原油は供給回復の一服でWTI90.42ドルへ反発した。
- 8月PCEは前年比3.4%(予想3.7%)、コア3.0%。10月利上げの織り込みは約70%から35〜40%前後へ低下した。
- それでも長期債は売られた。米10年債は5.298%、30年債は5.642%前後(引け間際の値、ソースにより差)で、利上げ観測の後退が長期金利の低下に結びついていない。
- S&P500は7,651.54(−0.25%)、ダウ50,906.05(−0.86%)、Nasdaq26,861.06(+0.24%)。一時+0.7%近く上げたが最終1時間で失速した。
- 金は終値4,155.93ドル(−0.70%)。PCE後に4,219.24ドルまで上げたが安値圏で引けた。9月は月間6.7%の下落。
- 実質金利2.91%(9/29時点)、期待インフレ2.36%。長期金利の上昇を担うのは実質金利でインフレ期待ではない。
- レジスタンス4,300心理的節目。9/25終値4,280ドル近辺の水準
- レジスタンス4,2309/28に割り込んだネックライン。9/30は高値4,219ドルまで迫ったが届かなかった
- 現在値4,1569/30の終値(4,155.93ドル、−0.70%)。日中高値は4,219.24ドル
- サポート4,1119/28の日中安値(現物)。8/5以来の水準。9/30も割り込んでいない
- サポート4,000心理的節目。出典のある水準ではなく節目としての目安
2026/10/01 07:30 JST(9/30の米国セッションを扱います)
訂正(2026/10/02):金の9/30の値を確定値に差し替えました。当初は「4,180ドル前後、日中4,166〜4,188ドル、終値は未確認」としていましたが、終値は4,155.93ドル(−0.70%)、日中高値は4,219.24ドルでした。金は「動かなかった」のではなく、PCE直後に上げてから押し戻されています。該当する記述と、それに基づく分析を書き直しました。
Macro Theme
前号は、弱い景気指標と高い利上げ確率が同居する日だった。9/30はその同居が崩れかけた。8月のPCE物価指数が前年比3.4%(予想3.7%)、コアが3.0%と予想を下回り、10月利上げの織り込みは約70%から35〜40%前後へ急低下した。株は寄り付き後に上昇し、S&P500は一時+0.7%近くまで上げた。
ところが、長期債は買い戻されなかった。10年債利回りは5.3%を一時超え、30年債は5.64%前後と高値圏で引けた。最終1時間で株も上げを失い、S&P500は−0.25%、ダウは−0.86%で終わった。政策金利の見通しが下がっても長期金利が下がらないという、前号で触れた期間プレミアムの構図が一段とはっきりした。
金はPCE直後に4,219ドルまで上げたが、長期金利の上昇とともに押し戻され、4,155.93ドル(−0.70%)と安値圏で引けた。9月は6.7%の月間下落である。原油はサウジの供給回復で前日に3.5%下げたあと、WTI 90.42ドルへ反発している。
Market Drivers
① 8月PCEが予想を下回る
PCE物価指数は前月比+0.3%、前年比+3.4%(予想3.7%)。食品とエネルギーを除くコアは前月比+0.2%、前年比+3.0%で、こちらも予想を下回った。
短期債は買われ、10月利上げの織り込みは前日の約70%から35〜40%前後へ低下した(ソースにより35%〜低40%台)。ただし物価の水準自体は3%台で、Fedの目標を上回ったままである。
② 長期債が反発せず、株は最終1時間で失速
10年債利回りは前日比+4bp程度の5.298%(日中高値は5.3%超)、30年債は+5bp程度の5.642%で引けた。いずれも引け間際の値で、ソースにより数bpの差がある。
S&P500は7,651.54(−0.25%)、ダウは50,906.05(−443.87、−0.86%)、Nasdaq総合は26,861.06(+0.24%)。下落はダウなど景気敏感・金利感応の大きい銘柄に寄り、Nasdaqだけがプラスを保った。
③ 原油は供給回復が一服して反発
9/29に下げた原油は9/30に戻した。WTIは90.42ドル(+1.2%程度)、Brentは103.50ドル(+0.9%程度)で引けた。9月はBrentが約14%高、WTIが約5%高である。トランプ大統領が対イラン制裁の緩和を否定したとの報道が、上昇の一因として伝えられている(単一ソース)。
原油が再び100ドル台のBrentに戻ったことで、PCEの下振れで得たインフレ面の安心材料が一部相殺された。WTIは他ソースで90.60ドルとする値もあり、数十セントの幅を持って見る。
情報元:
- Baltimore Sun/AP(Wall Street closes in on a winning September following an encouraging update on inflation、2026/09/30)
- Seoul Economic Daily(U.S. Treasury Yields Climb as Oil Slides, Stocks End Slightly Lower、2026/09/30)
- CNBC(S&P 500 falls Wednesday despite softer-than-expected inflation data、2026/09/30)
- Rio Times(Oil Slides as Middle East Exports Recover, Brent Settles at US$102.59)
- Profile News(Oil Prices End September Strong as Brent Gains About 14%)
金利(起点)
米10年債利回り:5.298%(前日5.232%。引け間際の値で、日中高値は5.3%超。ソースにより+4bp前後)
米2年債利回り:4.91〜4.92%(前日4.924%。ほぼ横ばい。ソースにより1bpの差)
米30年債利回り:5.642%前後(前日5.585%前後。+5bp程度)
日本10年債利回り:未確認。3.10%(+0.01%)とする情報が1ソースのみで、確認できないため採用しない。前日時点で3%台の高水準にあることまでは確かである
実質金利(TIPS10年):2.91%(9/29時点、FRED DFII10)
期待インフレ率(10年BEI):2.36%(9/30時点、FRED T10YIE)
2年債が横ばいのまま、10年債・30年債が上がった。PCEの下振れで利上げ確率は下がったのに、長短の傾きはさらに急になっている。政策金利の見通しよりも、期間プレミアムや債券需給が長期債を動かしていることを示唆する(推測を含む)。
本号から、名目金利を実質金利と期待インフレに分解できる。9/29時点の内訳は次のとおり。
長期金利の上昇を担っているのは、インフレ期待ではなく実質金利である。期待インフレは2.3%台で動いておらず、PCEの下振れを受けても下がっていない。市場は「物価が落ち着く」と読んだのではなく、物価見通しを据え置いたまま、実質の資金コストだけを押し上げている。金にとっては最も厳しい組み合わせになる。
実質金利とBEIはFREDの確定値のため1〜2営業日遅れる。9/30分の実質金利は未確定で、同日の名目上昇がどちら側から来たかは次号で確認する。
情報元:
- Baltimore Sun/AP(Wall Street closes in on a winning September、2026/09/30)
- Trading Economics(US 10 Year Note Bond Yield)
- FXEmpire(Gold retreats as 10-year yield hits 5.30%)
- FRED(DFII10 実質金利10年)
- FRED(T10YIE 期待インフレ率10年)
- FRED(DGS10 名目10年)
ドル
DXY:101.26〜101.41(Trading Economicsは101.2622で−0.11%、別ソースは101.41。ソース間で小さく食い違うため101.3前後と幅で示す)
USD/JPY:157円近辺(157.03円、−0.16%とする情報があるが単一ソース。前日は157.26円)
ドルは高値圏で小動きだった。利上げ確率が低下してもドル指数が大きく下がらず、長期金利の高止まりがドルを支えている構図である。日銀の利上げ観測で円は前日から小幅に強いが、方向を断定できる水準ではない。
情報元:
- Trading Economics(United States Dollar)
- Trading Economics(Japanese Yen)
- TradingKey(USD/JPY Moved Sharply on Sep 30)
商品
WTI:90.42ドル(+1.2%程度)。他ソースは90.60ドル。終値の確定値は数十セントの幅で見る
Brent:103.50ドル(+0.9%程度)。97.09ドルとする値が1ソースあったが、他の複数ソース(前日102.59ドル、当日103前後)と食い違うため捨てた
金(現物):4,155.93ドル(−0.70%。日中高値4,219.24ドル。Rio Times)。USAGOLDの10/1朝の前日比から逆算した値(4,156.20ドル)とも整合する。9月の月間では6.7%の下落である。AP系の速報に「金が3%下落」との記述があるが、他のソースと合わないため採用しない
Macro Drivers(三軸)
実質金利:9/29時点で2.91%。期待インフレが動かないまま実質が上がっており、金には逆風。9/30分は未確定
ドル:DXYは101.3前後の高値圏で横ばい。追い風にも向かい風にもなっていない
地政学:原油が90ドル台のWTI・100ドル超のBrentへ戻り、制裁緩和の否定報道が出た。前日に弱まったプレミアムが一部戻った
資金フロー結論
PCEの下振れは金の追い風になり、金は一時4,219ドルまで上げた。しかし長期金利が上昇に転じ、原油も戻したため、上げをすべて失って4,155.93ドルで引けた。4,111ドルの安値は割らず、4,230ドルのネックラインにも届かない、レンジの中の往復である。
情報元:
- Kitco(Gold rises as softer PCE cools October Fed hike odds)
- MarketScreener(Gold ticks up, yet is set for monthly loss as Fed rate outlook weighs)
- USAGOLD(Physical Gold Holds $4,177、2026/09/30)
- FXStreet(Gold can’t catch a PCE break as long US yields keep climbing)
- Trading Economics(Gold)
- Rio Times(Gold Slips 0.7% to US$4,156 as Rising Yields Erase PCE Bounce。9/30の終値と日中高値)
株
S&P 500:7,651.54(−0.25%)。9月は月間でマイナス
Nasdaq総合:26,861.06(+0.24%)
ダウ平均:50,906.05(−443.87、−0.86%)
日経225: 66,753.72(+1,272.45、+1.94%)。9/30の東京市場終値。米半導体株高・AI関連材料・原油安を受けた反発で、他ソースは66,826〜66,866と若干異なる
S&P500は一時+0.7%近くまで上げたが、最終1時間で上げを失った。下落の中心はダウで、Nasdaqだけが上昇して引けた。PCEの好材料が長期金利の高止まりに打ち消された形である。日経はこの米国セッションより前の東京時間の動きで、9/30の米株の結果は本日10/1の東京市場に反映される。
情報元:
- CNBC(S&P 500 falls Wednesday despite softer-than-expected inflation data)
- Baltimore Sun/AP(Wall Street closes in on a winning September)
- Washington Times(Wall Street swirls after data show inflation isn’t as bad as thought)
- 247WallSt(Nikkei 225 Opens Up 1.4% on September 30)
Crypto
BTC:83,000〜84,500ドル(9/30の米東部9:50に84,553ドル、別ソースで83,035〜83,070ドル。時点が違うため幅で示す)。終値と変化率は未確認
BTCは日中に84,000ドル台から83,000ドル台へ下げ、年初の水準を下回ったとの指摘がある。PCE後の株高局面で上がらず、最終1時間の株の失速と方向は同じだった。金と同様、利上げ確率の低下を買いに変えられていない。
現物ETFは9/21の週に+23.9億ドル、9/25までの週も約+24億ドルと2025年10月以来の大きさだったが、日次の流入は細っているとされる。9/30分の日次フローは未確認。
情報元:
- Fortune(Current price of Bitcoin for Sept. 30, 2026)
- CoinDesk(The bitcoin price level bulls need to defend、2026/09/30)
- Farside(Bitcoin ETF Flow)
Volatility
VIX:16.04(9/29時点、FRED VIXCLS)。9/30分は未確定
日経VI:未確認。9/30分を確認できるソースが無かった。前々号の値は27.51
9/29の16.04は、金利が19年ぶりの水準にある局面としては低い。株は長期金利の上昇をまだリスクとして織り込んでいない。ただし株が一時+0.7%から−0.25%へ反転した9/30当日の値は未確定で、その反転が恐怖の高まりを伴ったかどうかは次号で確認する。内外の温度差は、日経VIが取れないため本日は評価しない。
情報元:
今日の資金フロー
総括:物価が予想を下回っても、長期債の売りと原油の戻りが利上げ観測の後退の効果を打ち消し、金も株も上に抜けられなかった。
マーケットポジション(中期の歪み)
最大の歪みは、「政策金利の見通しと長期金利が逆に動いていること」である。利上げ確率は7割から3〜4割台へ下がったのに、10年債は5.3%、30年債は5.64%前後と高値を更新した。金融政策の織り込みだけでは長期金利を説明できず、期間プレミアムや財政・債券需給が主役になっている可能性がある(推測を含む)。
もう一つは、金が月間6.7%下げたあとも、4,111〜4,230ドルのレンジに張り付いていること。利上げ確率の低下という追い風で4,219ドルまで上げても上抜けられず押し戻されたため、上値の重さはレンジ内の需給ではなく長期金利の水準で決まっているとみられる(推測を含む)。
Next Flow(短期)
シナリオA:長期金利が反落して金がネックラインを試す
シナリオB:長期債の売りが続き、金がレンジ下限を試す
シナリオC:金曜の雇用統計で利上げ確率が再び動く
弱ければ確率がさらに低下し、短期債の買いが長期債にも波及するかが試される。
Market Bias(短期)
中立。物価の下振れで利上げ観測は後退したが、長期債の売りと原油の戻りが残り、金も株も方向を決めきれていない。
最優先の監視項目は3つ。
- 米30年債5.64%前後の水準と、10年債5.3%の維持・反落
- 金が4,111ドルを守りつつ、4,230ドルのネックラインに届くか
- 10/2(金)の雇用統計と、10月利上げ確率(35〜40%前後)の変化
本日の市場スケジュール(JST)
- 東京市場:通常取引。前日の米株(ダウ続落・Nasdaq小幅高)と原油反発を受けた寄り付き
- 米国市場:ISM製造業、Micron決算の織り込み(前号記載。日付と時刻は各公表元で要確認)
- 今週:10/2(金)雇用統計
2026/10/01 07:30 JST 時点。主要トリガーは8月PCEの下振れ、米長期債の高止まり、原油の反発。