XAU / USD4,088+0.65%ドル指数 DXY101.59+0.08%米10年金利4.84%−6bp実質金利 10Y2.60%−4bpWTI原油90.52+2.72%S&P 5007,353.73−4.36%日経22561,077.90−1.79%BTC / USD80,443+3.95%
No. 34平日更新
2026年11月6日(金)
TEITEN定点資金の流れで読む、今日の市場
WEEK 4210.12 — 10.16

第42週|CPI・PPIの上振れでも米10年債は週間−15bpの5.09%。資金はAI株から米国債とエネルギーへ移り、Nasdaqは−4.48%、WTIは+10.4%の101ドル台、金は−0.7%の4,166ドル

米9月CPIは前年比3.7%、PPIは6.3%と2日続けて上振れしたが、米10年債利回りは5.24%から5.09%へ、実質金利は2.91%から2.74%へ下がった。資金はAI関連株から米国債とエネルギーへ移り、Nasdaqは週間−4.48%、日経225は−5.37%、WTIはホルムズ海峡の緊張で+10.4%。実質金利とドルがそろって下がった週に、金は4,166ドルと−0.7%で越週した。

Financial and Marketing M16編集:村瀬 一郎2026年10月17日(土) 発行更新 2026-10-17 09:02 JST
今週の要点
  1. 米9月CPIは総合が前年比3.7%(予想3.6%)、コアが2.6%(同2.5%)、翌日のPPIは前年比6.3%(同5.3%)と、物価指標が2日続けて上振れした。それでも米10年債は5.24%→5.09%(−15bp)、実質金利は2.91%→2.74%(−17bp)と週間で大きく下がった(財務省)。
  2. 株はAI関連から資金が抜けた。Nasdaq総合は−4.48%で1か月続いた週間の上げが止まり、S&P 500は−1.95%。ダウは+0.67%で2週続伸した。日経225は10/15に−4.90%と急落し、週間−5.37%の65,324円。VIXは14.84→19.99へ上がった。
  3. 原油はホルムズ海峡での攻撃の増加で急伸し、WTI(11月限)は週間+10.4%の101.41ドル、Brent(12月限)は+4.9%の109.86ドルで清算した。Brentは日中に5月以来の110ドルをつけた。
  4. 金は10/14のCPI後に4,105.85ドル(USAGOLD確定値)まで下げ、10/15に4,171ドルへ戻したが、週末は4,165.58ドル(10/16読み取り)で週間−0.7%。実質金利とドルがそろって下がった週に、金は上がらなかった。
  5. ドル指数は102.21→101.78前後(読み取り)で5週ぶりの週間の下げ。10月FOMCの据え置き確率は87%(CME FedWatch、Reuters)へ上がった。BTC現物ETFの資金フロー、日本10年債の10/16分は未確認。

各資産の週次パフォーマンス

9 銘柄

貴金属

  • 金(XAU/USD)4,166−0.7%前週末4,194.61(USAGOLD確定値)から10/16読み取り値4,165.58へ−29.03ドル。CPI当日の10/14に−55ドルの4,105.85と前週の安値4,111を割り、10/15に+65ドルと戻したが、4,172ドルを2度超えられなかった。Trading Economicsも10/16は4,166前後(−0.11%)。12月限先物は4,181.10ドル(+0.26%、Investrade)で、現物と先物で金曜の向きが割れた

金利

  • 米10年債利回り5.09%−15bp前週末5.24%(財務省)。5.21→5.19→5.10→5.09%と4営業日続けて下がり、CPI当日の日中に5.27%まで上げた分も戻した。2年債は4.80→4.74%(−6bp)、30年債は5.60→5.43%(−17bp)。実質金利は2.91→2.74%(−17bp)、期待インフレ(10年BEI)は2.33→2.35%(FRED)で、下げはすべて実質側

為替

  • ドル指数 DXY101.78前後−0.4%前後前週末102.21(Yahoo DX-Y.NYB終値)。10/12に102.58、CPI後の10/14に102.55と18か月ぶりの高値圏をつけたあと、10/15に102.00へ反落。金曜はニューヨーク16:59の読み取り101.78で、終値は未確認。Reutersは金曜朝に101.77、週間−0.45%前後と伝え、5週ぶりの週間の下げとなる
  • USD/JPY157.97前後−0.2%前後金曜はInvestradeが157.97、Yahooが157.99。週中は10/13に158.52(Yahoo)まで上げたが、160円には届かなかった。Reutersは円が4週続落のあと週間+0.28%と伝える。植田総裁は10/16に利上げを続ける考えを示した(共同通信)

商品

  • WTI原油101.41+10.4%11月限の清算値(新華社、Rigzone)。前週末91.85から5日続伸し、金曜は+3.51%。12月限は99.02ドル(Investrade)で、Yahooの期近表示(99.04)は12月限に切り替わっている。Brent(12月限)は109.86ドルで週間+4.9%、日中に5月以来の110ドル

株

  • S&P 5007,659.44−1.95%前週末7,811.54から−152.10。CPIの10/14に−1.11%、金曜に−1.09%と週の安値で引けた(AP、Yahoo Finance、FRED)。半導体とソフトウェアが下げを主導した。ヘルスケアは10/15に最高値をつけた
  • Nasdaq総合26,140.03−4.48%前週末27,366.17から−1,226.14。週間の下げで1か月続いた上げが止まった(AP)。中国CXMTの報道(10/12)、CPI後のAI関連安(10/14)、金曜のAI投資の採算への疑問と、売りの理由が週の中で積み重なった。CoreWeaveは金曜も−11.91%。ダウは52,002.41で+0.67%と逆に上げた
  • 日経22565,324.29−5.37%前週末69,030.92から−3,706円。連休明けの10/13に−1.82%、10/15に−4.90%(アドバンテストは−14.96%)と急落し、6日続落。金曜は+898円の7日ぶり反発で、32業種が上げたが、前日の下げの3割に届かなかった(財経新聞、株探)。日経VIは30.14→32.17(10/15に36.13)

Vol

  • VIX19.99+34.7%前週末14.84(FRED)。週の前半は15台、CPIの10/14に16.87、金曜に+21.45%の19.99(Yahoo Finance)。金曜の日中は22.31と6/11以来の水準まで上げた(Yahoo Finance)。前週まで続いた15前後の低位が崩れた

週のレシオ

直近20週

金/銀

73.36+3.86
6/5幅 62.46〜73.3610/16

金が銀の何倍か。上がる週は不安の買い、下がる週は商品全体の買い

金/原油

41.23−4.67
6/5幅 41.23〜60.0610/16

金1オンスで買える原油の量(バレル)。上がる週は景気の不安、下がる週はインフレ・供給の材料

金/銅

640+5
6/5幅 635〜71110/16

金と景気の代理(銅)の比。上がる週は景気への不安、下がる週は景気への期待

いずれも COMEX 金先物(GC=F)と、銀(SI=F)・WTI原油(CL=F)・銅(HG=F、ドル/ポンド)の期近先物の比。各週の最後の取引日の値(Yahoo Finance)から算出。 期近の限月が替わる週は、比が限月をまたぐ。

ポジションとフロー

FOMC の織り込み

  • 10/28 の会合3.92%+4.0bp0.25%の利上げ 0.16 回分
  • 12/9 の会合4.15%+22.5bp0.25%の利上げ 0.90 回分

FF金利先物(CBOT)から算出した会合後の政策金利の見込み。起点は実効FF金利 3.88%(10/16、FRED EFFR)。 CME FedWatch と同じ考え方の算出値で、FedWatch の数値そのものではない。

CFTC 建玉(ネットの投機ポジション、4週)

  • 金(COMEX)マネージド・マネー+107,089前週比 −3,898
  • 銀(COMEX)マネージド・マネー+5,619前週比 −1,909
  • WTI原油(NYMEX)マネージド・マネー+40,574前週比 −13,024
  • 円(CME)レバレッジド・ファンド−33,673前週比 −8,630

CFTC Commitments of Traders。火曜時点の建玉で、金曜に公表。金・銀・原油はマネージド・マネー、円はレバレッジド・ファンド。単位は枚。

ETF の資金フロー

  • BTC現物ETF(米国・合計)−228.4百万ドル10/12 −65.4 / 10/13 +175.7 / 10/14 −261.4 / 10/15 +5.1 / 10/16 −82.4 Farside Investors

週次相関

直近8週
  • 金 × 実質金利(TIPS10年)−0.30弱い逆相関
  • 金 × ドル指数 DXY−0.29弱い逆相関
  • 金 × Nasdaq総合−0.17ほぼ無関係
  • 金 × BTC/USD−0.56逆相関

金(COMEX 先物 GC=F)の週間変化率と、各指標の週間変化(実質金利は bp、ほかは変化率)の相関係数。−1 は逆向き、+1 は同じ向きにそろって動いたことを示す。 8週は短く、1週の大きな動きで符号が変わる。因果関係は示さない。算出:Yahoo Finance・FRED DFII10・CoinGecko。各週の最後の取引日どうしの変化

テクニカル・レベル(週末時点)
  1. レジスタンス4,2309/28に割り込んだネックライン。3週続けて戻りの関門のまま
  2. レジスタンス4,19510/9のUSAGOLD確定値(4,194.61)。前週末の水準で、今週は一度も届かなかった
  3. レジスタンス4,17210/12の確定値(4,171.67)と10/15の確定値(4,171.06)。今週2度、引けで止められた
  4. 現在値4,16610/16のUSAGOLD読み取り値(山岳部時間18:03、4,165.58)。確定値は月曜の日次で照合する。週間−0.7%
  5. サポート4,13310/8のUSAGOLD確定値(4,132.84)。今週は終値で割っていない
  6. サポート4,10610/14のUSAGOLD確定値(4,105.85)。CPI当日の安値で、前週の4,111を割ったあとの今週の底
  7. サポート4,000心理的節目。前週にStoneXのアナリストが『床ができつつある』と述べた水準(Reuters)

週足のレンジ

  • 金(COMEX 先物)高値4,242.3安値4,095.0値幅147.3始値 4,220.8 → 4,181.1
  • 銀(COMEX 先物)高値60.141安値55.500値幅4.641始値 60.141 → 56.995
  • USD/JPY高値158.95安値157.54値幅1.41始値 158.30 → 157.99

Yahoo Finance(金・銀は COMEX 期近先物の日足、ドル円は1時間足でニューヨーク17時区切り)。金の現物(USAGOLD)とは水準が少し違う。

週の核心テーマ

物価の上振れより、AI株の売りが債券を動かした週だった。資金は株から米国債とエネルギーへ移り、金はその流れに乗れなかった。

10/14の米9月CPIは総合が前年比3.7%、コアが2.6%で、どちらも予想を0.1ポイント上回った。翌10/15のPPIは前年比6.3%(予想5.3%)と4年半ぶりの伸びで、小売売上高も+0.8%と強かった。教科書どおりなら金利は上がる。ところが米10年債利回りは、CPI当日の日中に5.27%まで上げたあと、5.19%、5.10%、5.09%と4営業日続けて下がり、週間では5.24%から−15bp。実質金利は2.91%から2.74%へ−17bpで、期待インフレ(10年BEI)は2.33%から2.35%へむしろ上がった(財務省、FRED)。金利の低下はすべて実質金利の側で起きた。

その裏で、株からは資金が抜けた。Nasdaq総合は週間−4.48%、日経225は−5.37%。中国CXMTのメモリ報道(10/12)、CPI後のAI関連安とCoreWeaveの社債を巡る懸念(10/14)、金曜のAI投資の採算への疑問と、売りの理由は日ごとに変わりながら積み重なった。一方でダウは+0.67%、ヘルスケアは最高値、エネルギーは原油高で買われている。株の中でも、資金はAI関連から景気に左右されにくい業種とエネルギーへ移った。

前週(第41週)のシナリオと照らすと、bear の発動条件はほぼすべて起きた。CPIは3.7%と上振れし、PPIも強く、Brentは105ドルを超えた。金は10/14に4,105.85ドルと、bearの境目とした4,111ドルを確定値で割った。ただし連鎖は途中で切れた。bearは米10年債が5.36%を上抜けると見たが、実際は5.09%まで下がり、金は10/15に4,171ドルへ戻した。着地は base のレンジ(4,111〜4,230)の中だが、通った経路はどの案とも違った。物価が強いのに金利が下がる局面を、3案のどれも想定していなかった。

そのうえで、金は実質金利が17bp、ドル指数が0.4%前後下がった週に、−0.7%で越週した。金利とドルという金の二つの追い風が同時に吹いたのに、金は上がらなかった。これが今週いちばん重い事実である。

資金AI関連株売り / 米国債買い(10年債 −15bp)/ 原油・エネルギー株買い / 金追い風を受けても横ばい圏

今週の主要イベント振り返り

① CPI・PPIの上振れと、上がらなかった長期金利(10/14〜10/15)

米9月CPIは総合が前月比+0.6%・前年比3.7%(8月3.4%、予想3.6%)、コアが前月比+0.3%・前年比2.6%(予想2.5%)。ガソリンの+9.1%が月間上昇の半分超を占めた(BLS)。10/15のPPIは総合が前月比+1.3%・前年比6.3%、コアも前年比5.0%(予想4.4%)で、物価の上昇はエネルギーから財とサービスに広がった。

ところが債券は、強い数字より中身の弱さを採った。小売売上高は+0.8%と上振れしたが、GDPの個人消費に近いコントロールグループは+0.1%(予想+0.3%)にとどまり、フィラデルフィア連銀の景況指数は37.8から20.9へ下がった。10/14は2年債だけが4.82%へ上がり、10年債は5.19%と前日より下げて引けた。10/15は2年債も4.77%へ下がり、10年債は5.10%と一日で9bp下げた。金曜のウォーシュFRB議長はIMFの会合で「会合の結果を前もって決めない」と述べ、追加利上げを示唆しなかった(Yahoo Finance)。

10月FOMC(10/27〜28)の据え置き確率は87%(CME FedWatch、Reuters)で、前週末に19%あった10月利上げの織り込みは15%前後へ下がった(Bloomberg、Yahoo Finance経由)。インフレ指標が上振れした週に、利上げの織り込みは後退した。市場は物価そのものより、物価高が消費と景況感を削る経路を先に読み始めた(推測を含む)。

情報元:米労働統計局、Investrade、米財務省 ほか2件

② AI関連株の売りと、東京の一日遅れの急落(10/12〜10/16)

売りは週の初めから始まっていた。10/12に中国CXMTの新しいメモリ設計の報道でMicronとSK Hynixが3%超下げ、10/13には韓国KOSPIが約−5.5%(Korea Times)。CPIの10/14はNasdaqが−1.88%、CoreWeaveが−15.46%と、AI関連の信用不安が金利上昇の不安に重なった。東京はその売りを一日遅れで受け、10/15に日経225が−4.90%の64,425.95円、アドバンテストは−14.96%。日経VIは36.13へ跳ねた。

10/15に米国が持ち直し、10/16の東京は+898円の7日ぶり反発となったが、戻りは前日の下げの3割に届かなかった(財経新聞)。そして金曜の米国で売りが再開する。AI投資が採算に合うのかという疑問で、Nasdaqは−2.14%、Intelは−5.79%、CoreWeaveは−11.91%で、半導体とソフトウェアが下げを主導した(AP、Yahoo Finance)。S&P 500とNasdaqは週の安値で引けた(Investrade)。

Nasdaqは週間−4.48%、ラッセル2000は約−3%(AP。Yahooの終値では−3.05%)、ダウは+0.67%で2週続伸。同じ週に、ダウとNasdaqの差は5ポイントを超えた。売られたのは株全体ではなく、AI関連に集中した資金だった。

情報元:AP、Investrade、Yahoo Finance ほか3件

③ ホルムズ海峡の緊張と、原油の5日続伸(10/12〜10/16)

WTI(11月限)は93.74、94.14、95.09、97.97、101.41ドルと5日続けて上がり、週間+10.4%。Brent(12月限)は金曜に+3.72%の109.86ドルで清算し、日中に5月以来の110ドルをつけた(新華社)。イランは米国による港の封鎖と9月の制裁強化への対抗として、ホルムズ海峡での攻撃を強めていると伝えられ、Eurasia Groupは紛争が激しくなる確率を35%から65%へ引き上げた(Rigzone)。フーシ派のサウジへの攻撃、ロシアとウクライナのエネルギー施設への攻撃も続いている。

供給側の手当ても出た。米国は金曜に戦略石油備蓄から最大1,700万バレルの放出を提示し、IEAは軽油2,000万バレル超の放出で合意した(10/15)。Rigzoneは、海峡を通る原油の量は先週1億バレルを超え、戦前の水準に近づいていると伝える。金曜にはイランが対話に前向きとの報道で一時下げたが、すぐに買い戻された(Investrade)。

供給の量は戻りつつあるのに、価格は上がった。原油が反応しているのは足元の量ではなく、攻撃が激しくなる確率である(推測を含む)。期待インフレ(10年BEI)が2.33%から2.35%へ上がったのは、この原油高とみられる。名目金利の低下を、期待インフレの上昇が一部打ち消した。

情報元:The Star/新華社、Rigzone、Investrade ほか1件

今週の資金フロー構造

AI関連株米国債・ディフェンシブ株へ / 原油地政学の確率で買い / 金金利とドルの追い風を換金売りが打ち消す

第一の流れは、AI関連株から米国債への移動である。Nasdaqが週間−4.48%、日経225が−5.37%と下げた週に、米10年債は−15bp、30年債は−17bpと長い年限ほど買われた。2年債は−6bpにとどまり、2年と10年の差は44bpから35bpへ縮んだ。CPIとPPIが上振れした週に長期債が買われたのは、株から抜けた資金の受け皿になったためとみられる(推測を含む)。ドル指数は前週の4週続伸から一転して週間−0.4%前後と下げ、Reutersは「AI株の売りでもドルに逃避の買いが入らなかった」と伝える。今週の逃避先は、ドルではなく米国債だった。

資金AI関連株・日本の半導体株売り / 米長期債買い / ドル売り

第二の流れは、原油とエネルギー株への買いである。WTIは週間+10.4%、Brentは+4.9%。10/12にはS&P 500のエネルギー業種が+1.43%と指数を支え(Investrade)、ヘルスケアは10/15に最高値をつけた。株から抜けた資金の一部は、物価高に強い資産へ移っている。原油高は期待インフレを支え、名目金利の低下を実質金利に集中させた。

資金原油買い(WTI 101.41ドル)/ エネルギー株・ヘルスケア株買い / 期待インフレ小幅上昇(2.35%)

第三に、金は追い風の中で上がらなかった。実質金利は−17bp、ドル指数は−0.4%前後と、どちらも金に有利な方向へ動いた。それでも金は4,194.61ドルから4,165.58ドルへ−0.7%。日ごとに見ると、金が大きく動いたのは10/14(−55ドル)と10/15(+65ドル)で、10/14はドル高、10/15はドル安と実質金利の低下に素直に反応した。金利とドルに反応しないのではなく、その他の日に株安と同じ向きで小さく売られ続けた。AI株の損失を埋める換金売りが金に及んだ可能性がある(推測)。BTCは82,542ドル(10/10 09:03 JST)から81,528ドル(10/17 09:04 JST)へ−1.2%で、二つの代替資産はそろって弱かった(CoinGecko)。

資金金追い風を受けても−0.7% / BTC売り(−1.2%)

総括:物価の上振れは金利を押し上げず、AI株から抜けた資金が米国債と原油へ向かった。金利とドルの追い風は確かに吹いたが、株安の換金売りと打ち消し合い、金は4,106〜4,172ドルの中に閉じ込められた。来週、株の売りが止まるかどうかが、金に追い風が届くかを決める。

なお、次の指標は複数ソースで突き合わせても確定できず、本稿では「未確認」とした。ドル指数の金曜終値(読み取り101.78、Reuters朝方101.77と別報道の101.70〜101.87で割れる)、USD/JPYの金曜終値(157.97〜157.99)、BTC現物ETFの週間の資金フロー、日本10年債の10/16分(財務省の最新掲載は10/15の2.948%)、FRED VIXCLSの10/16分(未掲載。本稿のVIXはYahoo Financeの終値)。

情報元:米財務省、FRED、USAGOLD ほか7件

来週の備え(10/19〜10/23)

最重要イベント

10/21(水)のテスラとメタ・プラットフォームズの決算。今週の株の売りはAI投資の採算への疑問が中心で、来週はその疑問に企業が自分の数字で答える最初の週になる。予想はメタの7〜9月期の1株利益6.11ドル(前年比−15.7%)、売上高633億ドル(+23.5%)、設備投資397億ドル(前年188億ドル)、テスラは1株利益0.43ドル、売上高279億ドル(CMC Markets)。設備投資が前年の2倍を超える見込みの中で、利益が減る。その組み合わせを市場が受け入れるかが焦点である。同じ週にテキサス・インスツルメンツ、IBM、Lam Research(CMC Markets)の半導体・IT決算も続く。

物価と景況感では、10/23(金)の日米欧の10月PMI速報と、米ミシガン大学の消費者信頼感指数が出る。今週の債券は物価の強さより消費と景況感の弱さに反応したため、PMIが同じ読みを支えるかを見る。10/19(月)の中国7〜9月期GDPと9月の小売売上高は、週の始まりのリスク選好を左右する。FOMC(10/27〜28)とPCE(10/29)は再来週になる。

国内政治・政策の波乱要因

焦点は日銀の10/29〜30の会合と、10/23(金)の9月全国CPIである。植田総裁は10/16の挨拶(内田副総裁が代読)で「経済、物価情勢に応じて政策金利を引き上げ、緩和度合いを調整していく」と述べ(共同通信)、利上げのペースは物価を2%程度で安定させる観点を重視して検討するとした(NHK)。一方で、月末の会合は据え置きの公算が大きいとの一部報道もある(みんかぶ)。全国CPIが強ければ、10月か12月かの議論に効く。

ドル円は今週157.9〜158.5円台で動き、160円には届かなかった。米金利の低下で上値は重くなっている。国内政治で今週相場を動かした材料は確認できていない。

地政学シナリオ

ホルムズ海峡では、今週、複数のタンカーとコンテナ船が炎上または沈没したと伝えられ(Yahoo Finance)、イランは米国の港湾封鎖への対抗として攻撃を強めている。Eurasia Groupは紛争が激しくなる確率を65%へ引き上げ、トランプ氏は11月3日の中間選挙後の大規模な攻撃を否定しなかった(Rigzone)。前週は「中間選挙までは攻撃しない」との投稿で軍事行動のリスクが後退したが、今週は選挙後のリスクが価格に入り始めた。

一方で、海峡を通る原油は戦前の水準に近づき、米国の戦略備蓄の放出も提示されている。供給の量が戻る中で攻撃の確率だけが上がる構図で、原油は量より確率で動いている。Brentが110ドルを明確に上抜ければ、原油高 → 期待インフレの上昇 → 実質金利の低下が止まる、という金の逆風の連鎖が動く。イランの対話の報道が具体化すれば、逆に原油と期待インフレが同時に下がる。

日経・円の焦点

日経225は週間−5.37%の65,324円で越週した。10/15まで6日続落し、10/15に−4.90%と急落、金曜は+898円で反発したが戻りは3割に届かなかった。下げの中心は半導体の値がさ株で、10/15はアドバンテストが−14.96%と日経225で最大の下げだった。日経VIは36.13から32.17へ下がったが、前週の30前後をなお上回る。

来週の東京は、金曜の米国のNasdaq−2.14%を月曜に受けるところから始まる。10/21のテスラ・メタ決算は10/22(木)の東京に反映され、10/23には国内CPIが出る。米国のAI関連の売りが止まるか、160円を前に上値が重くなった円相場が輸出株を支えるかが焦点になる。

予想レンジ:上限 67,800円 〜 下限 63,500円

レンジは編集部の想定で、上限は10/13〜14の終値(67,744〜67,778円)を回復する場合の目安、下限は10/15の終値(64,425.95円)を明確に割り込む場合の目安として置いた。

情報元:CMC Markets、The Globe and Mail、共同通信/Yahoo!ニュース ほか6件

来週のシナリオ

3 案
Bull Case上振れ

10/21のテスラ・メタ決算でAI投資の採算への疑問が和らぎ、株の売りが止まる。ホルムズ海峡の攻撃が減り、Brentが105ドルを割る。10/23の日米PMIが景気の減速を示す

米10年債が今週の5.09%を下回り、実質金利が2.7%を割る → 10月据え置きの織り込み(87%)が固まり、ドル指数が101台前半へ → 今週は効かなかった金利とドルの追い風が、株の換金売りが止まることで金に届く

価格目処4,172〜4,195の上値帯を回復、続いて4,230

Base Case基本

決算は銘柄ごとに割れ、AI関連の売りは続くが広がらない。原油はWTI 95〜105ドル、ドル指数は101〜102台、米10年債は5.0〜5.2%で動く

米国債への資金の逃避と、原油高による期待インフレの下支えが拮抗し、実質金利は2.7%台にとどまる → 金は金利の追い風を受けながらも、株の下落局面での換金売りに押される

価格目処4,106〜4,195のレンジ(中心は4,133〜4,172)

Bear Case下振れ

決算を受けてAI関連の売りが加速し、VIXが今週の日中高値22.31を超える。Brentが110ドルを上抜け、期待インフレ(10年BEI)が2.4%へ上がる

株の損失を埋める換金売りが金にも及ぶ → 原油高で期待インフレが上がり、名目金利の低下が止まって実質金利の下げが一服 → ドルは逃避の買いで102台へ戻る → 金は今週の安値4,106を割る

価格目処4,106割れで4,000

来週の主要スケジュール

★ は最重要
  1. 10/19(月)
    • ★中国7〜9月期GDP、9月鉱工業生産・小売売上高
    • 米10月NAHB住宅市場指数
  2. 10/20(火)
    • 米9月住宅着工・建築許可、中古住宅販売保留
    • 中国人民銀行の金利決定
    • 決算(Netflix、GEエアロスペース、RTX、キャピタル・ワン)
  3. 10/21(水)
    • ★決算(テスラ、メタ・プラットフォームズ、テキサス・インスツルメンツ、IBM)
    • 日本9月貿易統計、英9月CPI
  4. 10/22(木)
    • 米新規失業保険申請件数・景気先行指数
    • 決算(ブラックストーン、ハネウェル、ニューモント、ユニオン・パシフィック)
  5. 10/23(金)
    • ★日本9月全国消費者物価指数(CPI)
    • 日米欧の10月PMI速報、米ミシガン大学消費者信頼感指数
    • 決算(アメリカン・エキスプレス、SLB)
Market Bias(来週)

中立。今週は実質金利が17bp、ドル指数が0.4%前後下がったのに、金は−0.7%で越週した。金利とドルの追い風を、AI株の売りと原油高が打ち消した週だった。来週は10/21のテスラ・メタ決算がAI株の売りの行方を、10/23の日米の物価と景況感が金利の方向を決める。株の売りが止まれば金利低下の追い風が金に届き、売りが広がれば換金売りが続くと見る。